『仮面ライダージオウ』第42話は、諸田監督&毛利脚本による、「アナザージオウⅡ編」の中編。3話構成は久しぶりですね。こういった中継ぎの回はどうしても感想が書き辛い面もあるのだけど、ディケイドの変身やソウゴとゲイツの「改めての」仲の親展など、トピックが多い回でもありました。
さて、今週は先に広報から済ませます。
まず、以前より「作ってます!」と告知していた評論同人誌『さようなら平成仮面ライダー』ですが、色々とあってイチから仕切り直しました。当初はブログに掲載済みの「さようなら平成仮面ライダー」シリーズを加筆修正する方向で進めていたのだけど、抜本的に構成を見直して、完全に新規で書くことにしました。20のライダーをそれぞれ7つの切り口から、累計140の視点で語り倒す内容を予定しておりまして、無事このまま完成すれば200ページくらいくらいにはなりそうです。
執筆中の評論同人『さようなら平成仮面ライダー』、クウガの項のページサンプル。校正前なのをご了承ください。こんな感じで、各ライダーについて複数の視点から掘り下げていく構成。その単作だけでなく、必要に応じてシリーズ過去作に触れるのを「あり」としている。 pic.twitter.com/EvcEuCsxX5
— 結騎 了 (@slinky_dog_s11) 2019年7月12日
今現在、『アギト』を執筆中。今週末あたりに『龍騎』を終えて、来週早々にも『ファイズ』・・・ くらいのペースで進めたい。目標は、『ジオウ』放送終了前後のタイミングでのオンデマンド販売開始。ネット注文で買えるように考えています。また続報を追ってお知らせします。(こうやって言い切ってしまうことで自分を追い込む・・・)
また、ブログ2周年を契機とした読者アンケートも引き続き実施中ですので、回答がまだの方は、何卒、ご協力をよろしくお願いします。今後のブログ運営の参考にさせてください。
ということで、『仮面ライダージオウ』の感想を綴る「ZI-O signal」(ジオウシグナル)、今週もいってみましょう。
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海東という愉快犯、タイムジャッカーの目的
今回、すごく地味(地味?)なポイントとして好きなのが、海東が前回登場時に手に入れていた白ウォズの未来操作ノートを全く使っていない点。これを使えば、スウォルツから強制的に譲渡された時間停止能力なんて無くても、グランドジオウウォッチを入手することができたはず。しかし、そんなアイテムを持っている素振りすら見せない。
まあ、単にシナリオ上出てこなかった、というだけかもしれませんが、私はこの海東の妙にドライな面というか、本質的にはお宝の中身を見ていない感じが、好きなんですよ。『ディケイド』で初めて出てきた時も、ファイズ学園に眠っていた王のベルトに喜ぶものの、それを使って戦うことはしない。その「お宝」を手に入れて何をしたい・どうしたい、ではなく、「お宝」を手に入れる行為自体が楽しくて愉快なんだ、と。
そういう、ある種屈折した愉快犯というか、言ってしまえばちょっと狂い気味な性格を持つ海東が良いよね、と。今回も、盗みに入って返り討ちに合うという完全な自業自得なのだけど、結果的に手に入れた時間停止能力を使ってジオウの前で得意がるあたり、「海東だなぁ~」って。彼がイキイキと盗みを働いている姿が、こう、良いんですよ。
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そして、そんな海東が今回新たに獲得した、時間停止の能力。振り返ってみると、アギト編の32話の時にこんな感想を残していた。
「彼女をタイムジャッカーにしようとしているのか?」というウォズの問いかけは、タイムジャッカーという属性が後天的なものであることを意味する。どうやら、生まれながらにして時を操る能力を持っているとか、そういうタイプの種族ではない模様。
そして、ツクヨミが時止め能力を持つ謎。話しぶりから察するに、スウォルツは何者かから時止め能力を与えられ、彼がそれをウールやオーラに分け与えている感じなのかな。なので、あの3人は明確な上下の関係がある。しかし、スウォルツはツクヨミにもそれを与えた訳ではない。そうなると、ツクヨミは、スウォルツと同じ背景で能力を手に入れた可能性がある。
・感想『仮面ライダージオウ』第32話「2001: アンノウンなキオク」ZI-O signal EP32 - ジゴワットレポート
「同じ背景で力を手に入れた」というよりは、答えは「同じ一族だった」という感じですね。オーラはここ最近毎度のように「上から目線はやめてくれる?」と怒っているけれど、スウォルツから力を分け与えられたのなら、ある程度の上下関係は仕方がないと思われる・・・。というか、公式サイトにも「だとすれば、オーラが毎回気にしていたスウォルツの上から目線も納得といえるのではないだろうか。」と書かれてしまっているぞ!
むしろ、この前振りがやっと生きてきたか、という感じがありますね。そもそもタイムジャッカーとは何者なのか、という問いには全く届かないのですが、シリーズも終盤ということで、ツクヨミの出生を入口にどんどん明かして欲しいところ。
次回、「スウォルツの野望が明らかに!」という触れ込みだけれど、やはり順当に「自分こそが王になる」パターンだろうか。タイムジャッカーの目的は「新たな王の擁立」。いずれ行われる王決定戦のためにアナザーライダーを作っておく・・・というのが序盤の頃に「補完計画」で語られたけれど、この設定は今も生きているのだろうか。そもそも、なぜ彼らが新しい王を擁立したいのかも不明なんですよね。オーマジオウのことを良く思っていない言動はちょくちょく見受けられたので、動機としては、もしかしたらゲイツたちとさほど違いはないのかもしれないけれど。
なので、「オーマジオウを王にさせない」という目的のために、「スウォルツ自身が王になろうとする」という展開なら、納得感はあるにはある。しかし一方で、スウォルツは他でもないソウゴに「王になる思想」を植え付けた張本人。なぜ自らオーマジオウを作るような行動をしておきながら、それ以外の王を擁立しようとするのか。これだけ見ると完全に行動が矛盾しているので、「スウォルツの目的」が一本筋を通してくれることを期待したい。
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ソウゴとゲイツ、積み重ねた関係性
今回の「アナザージオウⅡ編」、ソウゴ役の奥野くんの演技がすごく良いですよね。レジェンドライダーと関わっていくターンを終え、遂に『ジオウ』の本筋が動き出したからか、意気込みが伝わってくる感じ。
今回のアナザージオウⅡ編、ソウゴ役の奥野くんの芝居がすごく良い。困惑する様子から、それでもゲイツやツクヨミを信じる覚悟を決めた表情まで。ジオウを敵対視するゲイツをなんだかんだで微笑ましい空気に持って行ってしまう、そんな器の大きさに説得力がある。計り知れない器っぷりがとても良い。
— 結騎 了 (@slinky_dog_s11) 2019年7月7日
『ジオウ』が始まった頃の雑誌のインタビューだったか、白倉プロデューサーが、「奥野という俳優と出会えたことで『ジオウ』の一番の難所はクリアできた」みたいなことを述べていて。
常盤ソウゴというキャラクターは、すごく難しくて、造形が複雑だと思うんですよ。ともすれば「いける気がする!」と達観した振りに終始する薄いバランスにもなってしまいそうなところを、下山脚本の「根に熱いものを持つ」描写や、毛利脚本の「ナチュラルに魔王ムーブを発動させるクレイジーさ」、そして他ならぬ奥野くんの器の大きさを感じさせる芝居が融合して、すごく絶妙な塩梅に仕上がってきたなあ、と。
仮面ライダージオウで活躍中! 男劇団 青山表参道Xの【奥野壮】さんが惚れる、理想の女性は?
— VOCE(ヴォーチェ) (@iVoCE) June 15, 2019
イケメンの登竜門と言われる「仮面ライダー」でデビュー、初主演の「仮面ライダージオウ」で活躍されている奥野壮さん。気になる彼の素顔を覗いてみました😍https://t.co/lxEGUe9bZR pic.twitter.com/hayQ6jCMuE
今回の42話の、ゲイツとの屋上のシーン。またもや関係性がイチからに戻ってしまった相手に対し、じわじわと距離を詰めながら、気付いたら自分のペースに引き込んでしまう感じを、奥野くんがすごく良い味で演っていて。ちょっとびっくりしたくらい、「常盤ソウゴ」というキャラクターの味が出たシーンだったと思いますね。きりっとした目つきと、一方で、朗らかに笑いながら周囲を巻き込んでいく感じ。そのどちらも、「人たらし」な感じがあって。やはり、人の上に立つ者は、まずもって単純に人に好かれる必要がある・・・。
そして、「お前の知ってる俺は、どんな奴だ」などと聞いてしまうゲイツくん。お前・・・なんて・・・なんてエモい問いかけを・・・。歴史がねじ曲がっても、そこに確かにあった関係性が魂のどこかで生きている。そういう、時間の強制力と人と人との絆のちょうど真ん中をいくような感覚って、時間を扱ったSFの醍醐味ですよね。
あと、ソウゴに「ほら、そんなふうにさ」と諭されて「フッ・・・」と笑みをこぼしながら手を放すゲイツ、1億点。あのたった数秒にこそ、累計42話の積み重ねがある。
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通りすがりの仮面ライダーだ!
今回の一番の見どころだったかもしれない、士の変身。まず、アナザービルドとアナザーカブトを蹴りでなぎ払うシーン、あまりの綺麗な脚の上がりっぷりにちょっと笑ってしまいました。いやぁ、素晴らしい。
加古川飛流の「なんだお前?」の台詞が出た時点で「通りすがりの仮面ライダーだ、が、出る!」と期待して、しっかり「通りすがりの仮面ライダーだ」が発せられる安心感といったら。しかし、ここでディケイドのカードを取り出すシーン、ライドブッカーからカードを抜く時の例の効果音(「ブゥゥン!」ってやつ)をつけて欲しかった。脳内では完璧に再生されたけど。というか今更ながら、銃モードにできるライドブッカーがあるのに普通の銃でアナザーライダーを牽制する士、強者すぎる・・・。
しかしこの辺り、実は『ディケイド』的な旨味が眠っていそうなポイントなんですよね。
というのも、以前カブト編でツクヨミと未来に行った際にさりげにコックの姿になっていたように、士には、それぞれの世界に応じた職業が割り振られる。『ディケイド』当時、龍騎の世界で弁護士になっていたように、髪形や服装が世界に応じて変化するのである。その点でいくと、『ジオウ』に何度か登場している士は赤のシャツにジャケットスタイルであることが多かったが、今回の改変された2019年において、何故かミニタリーファッションなっている。
私が使う機関銃はアナザーライダー三体をも凌ぐ pic.twitter.com/6B5UZNN88L
— 井上正大 (@MAAAAAAAASAHIRO) June 30, 2019
これはつまり、「世界によって役割が異なる」というディケイドルールにおける、「本来の2019年」と「アナザージオウⅡにより改変された2019年」は、世界設定として異なる、ということだろう。士はこの「改変後のジオウの世界」において、レジスタンスのひとり、という設定を与えられたのかもしれない。(よく見ると、レジスタンスのメンバーが身体の一部に巻いている赤布を士もちゃんと腕に巻いている)。「改変後のジオウの世界」は、言い換えれば、「リ・イマジネーションされたジオウの世界」なのだ。
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ウォズの真意は
今回のウォズの行動ですが、何かと不穏に嗅ぎまわっている様子であったり、「私のなすべきこと。それは今も昔も変わらない」という台詞であったり、やはり未来のオーマジオウの指令を受けての「実はソウゴの味方」な感じかなのかな、と。メタな話をしてしまうと、「ウォズの裏切り!?」は夏映画の予告でも大々的に扱われているので、ここでそのネタはやらないと思われる・・・。
おそらく、オーマジオウの指示のもと、「歴史を書き換えた犯人とその能力」を特定し、ソウゴが魔王を目指す正史に戻すことが目的なんじゃなかろうか。そのために、スウォルツが祭り上げた加古川飛流にこれ幸いと便乗し、祝いながら懐に入り込む。狡猾ポジジョンの彼なら朝飯前でしょうね。
といったところで、次回、「アナザージオウⅡ編」がクライマックス。しかしこうなってくると、実は一番楽しみなのは次回予告なのですよ。レジェンドライダー編が終わって、遂に本筋に戻ってきたので、加古川飛流を攻略したら次はどんな敵が現れるのか。夏映画が「真の最終回!」と煽られているが、それとのリンクはどの程度あるのか。
来るべき令和ライダーの発表も正式アナウンスされたことで、いよいよ本当に、『ジオウ』が終わっていく・・・!!
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