『仮面ライダージオウ』第39話は、柴崎監督&毛利脚本による電王編前編。毎年お馴染みのゴルフ放送による一週お休みということで、このジオウシグナルも前回よりだいぶ間が空いてしまいました。ゆうに2週間もあったというのに、またもや放送前日の土曜日に更新してるよ。HAHAHA、参ったねこりゃ。
さて、『ジオウ』も遂に電王編。番組開始当初、白倉プロデューサーは雑誌か何かのインタビューで「○○編を19ライダーやるとそれだけで38話も使ってしまう」といった旨の発言をされてましたが、結果として割とその路線になってきたなあ、と。ディケイド編は特段設けずに、ダブルとクウガは冬映画に回して(これは賛否両論あるけど)、ドライブは夏映画に割り当てる。つまり、TVシリーズで消化したのは計15ライダー。改めてこうやって数えると結構やってきたなあ、という感じ。
その中でも、電王は心なしか待遇が良いですよね。冬映画では佐藤健の本人出演、アナザー電王が物語のキーとなり、TVシリーズでもタロスズに侑斗にデネブにグランドジオウ登場回まで抱き合わせ。シリーズ随一のヒット作、かつ、白倉プロデューサーとしても思い入れの強い作品でしょうから、ある意味納得のポジション。
何より、『ジオウ』と同じタイムトラベルものとして、「さらっと」扱う方が危険なのかもしれない。こうやって、しっかり注力するくらいじゃないと乗りこなせない、そんなパワーのある作品ですからね。
ということで、『仮面ライダージオウ』の感想を綴る「ZI-O signal」(ジオウシグナル)、今週もいってみましょう。
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電王という劇薬
『電王』は、とにかく劇薬という印象で。電王編の放送を機に、本編を久しぶりにかいつまんで鑑賞しているのだけど、いやあ、やはりとても面白い。エンターテイメントとして、シンプルに完成度が高いというか。イマジンたちの騒がしくハチャメチャなノリを、小林靖子による切なくも胸を騒がせるシナリオが力強くコントロールする感じ。
笑って、燃えて、泣いて、ザワついて。『クウガ』の頃には絶対に考えられなかった演出ばかりだけど、紛れもない平成ライダーの看板のひとつなんですよね。
当時の思い出、あるいは『電王』という作品への感想については、先日更新した上の記事をご参照ください。破天荒な印象だけど、その実、平成ライダーというシリーズが積み上げたあれこれを誠実にアップデートした作品だよね、という話です。
そんな『電王』を指して劇薬と称するのは、ひとつはそのノリ、もうひとつはSFの設定にある。
まずノリの部分からいくと、言わずもがなのイマジンコントである。モモタロス、ウラタロス、キンタロス、リュウタロス。更にここにデネブが加わると、もう場の温度は完全に『電王』一色。仮にどんなお固い空気の作品でも、一瞬にして『電王』の空気に引き寄せられる。それほどの、ズルいほどの引力を持った作品だよなあ、と。今回も、クジゴジ堂にイマジンが集っていたあの空間は、完全に『電王』のそれに引っ張られていて、『ジオウ』のキャストはついていくのに精一杯な印象すら・・・。気を抜くと番組を乗っ取りかねないパワーがあるよなあ、と。
もうひとつのSF設定は、そのタイムトラベルや記憶理論、そしてデンライナーという飛び道具。『ジオウ』におけるタイムトラベルの理論と『電王』のそれは一見似ているようで微妙に解釈が異なるので、それをどのレベルで共存させるかというのは、脚本制作段階でかなり慎重に扱ったのかなあ、と。昨年の冬映画では、このポイントを『ビルド』のテーマとも上手く絡めていて、舌を巻いたものでした。
平ジェネFOREVER、電王のタイムトラベルを成立させる「記憶が存在を作る」理論と、ビルドの「存在意義とアイデンティティの確立」というテーマを、ジオウの「レジェンドを扱う総括作品としてのギミックと力技」で抱き合わせてしまうの、ある程度の結果論はあると思うんだけど、すげぇバランスだよな。
— 結騎 了 (@slinky_dog_s11) May 11, 2019
これもまた作風やノリと一緒で、扱いを間違えれば作品の根幹からして「持って行かれそう」な設定。「記憶が時間(存在)を作る」理論も、言ってしまえば何でもありですからね。これを、いかにシナリオとして説得力や旨味を持たせるか、単に便利設定として使い捨てることがないか。『電王』はそれ自体が強力だからこそ、慎重に扱わなければならない劇薬なんですね。
しかし、もう『電王』から12年。10年以上経つのに、劇薬っぷりが色褪せるどころか、その後の展開において余計増してしまっているのは、流石の一言である。
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「電王らしさ」
今回の電王編は、そんな電王らしさをギリギリの塩梅で盛り込んだ。本当にギリギリというか、もはや「ジオウ電王編」ではなく「電王ジオウ編」な印象すらあったけど。
まずもって、お馴染みの憑依遊び。ゲイツにモモタロスは誰もが期待するところで、安定の暴れっぷり。次回予告ではウォズにモモタロスが憑依していたけれど、ウォズ役の渡邊圭祐くんは骨格が佐藤健に似ているので、これはちょっと見ものだぞ、と。そして何より生瀬さん。まさかリュウタロスを憑けるとは。流石のキャリアというべきか、ギャグパートとして精度が高すぎて最高でした。
しかし、ウラタロスですよ。なんでオーラに憑依しないんだ。頼むって。『ディケイド』の時のときめきをもう一度くれよ。頼むよ。後生だ!後生だから!!
俺「ゲイツにモモタロスが憑依するの、毎度お馴染みだけど楽しみだなぁ」
— 結騎 了 (@slinky_dog_s11) June 3, 2019
俺の中の俺「オーラにウラタロスは憑依しないのか・・・?? た、頼む・・・・・・」
そして、飛び道具・デンライナーを「時計みたいなもの」とするのは面白かったですね。確かにそうだけど、これまでそういうアプローチはあまり無かったので。そして、「時計以外も何でも依頼されたら修理しちゃう」という毎度おなじみのパターンにデンライナーという「時計」を当てはめるのも、実に上手い。飛び道具を『ジオウ』世界に馴染ませる、これ以上ない構成だなあ、と。
ストーリーの面では、ゲストキャラの物語において「姉」がポイントなのが、いかにも『電王』ですね。愛だからこその憎。それがひっくり返る時の尊さ。それこそが、『電王』が当時繰り広げたドラマの底にあったもの。次回、『電王』らしい、人の温かみを感じるようなビターな落とし所があったら良いなあ、と。
そして、要所要所に散りばめられた、『電王』を感じさせる要素の数々。「モモタロスが憑依したゲイツがツクヨミに変身をサポートされる」シーンは、誰もが『電王』1話のハナと良太郎を思い出すところ。トリニティとクライマックスフォームを重ねるくだりであったり、デンライナーが敵に強奪されるのは映画『俺、誕生!』らしくもあったり。
更には、ジオウメンバー・タロスズ・ゼロノス組・アナザー電王と、すでに登場人物が渋滞気味なのに、ここにモールイマジンを加えてくるとは。アナザーライダーの契約と通常のイマジンの契約を同時に描くのは、実に意欲的な構成である。
「よりによってまたモールイマジンかよ」という思いもあるにはあるけれど、これにより、『ジオウ』の「アナザーライダーをゲストキャラと位置づけた人助けパターン」と、『電王』の「イマジンの契約履行を追うことで過去に飛びながら契約者を救うパターン」が、綺麗に融合していくんですね。全体として、とても練られている。
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祝え、グランドジオウ!
そんな混沌とした電王編のラストに待ち受けるのは、ジオウ究極の姿、グランドジオウ。腕時計モチーフであることを考えると、「グランドセイコー」辺りを引用しているのかな。金色の姿や全身に散らばった歴代平成ライダーのレリーフなど、ディケイドコンプリートフォーム・ブレイドキングフォーム・ゴースト平成魂等々、色んなレジェンドライダーの姿が走馬灯のようによぎる。
しかしまあ、グランドジオウライドウォッチを6月の頭に発売し、しかし実際の登場は同月の下旬というのは、実に思い切ったなあ、と。お馴染みのウォズの「おっと、まだ先の未来でした」を活用することで、販促をきっちりこなす辺り、平成ライダーらしいしたたかさ。これはホビーアニメの方法論にも通じますよね。
グランドジオウライドウォッチ、あのメロディがやたら癖になるので、ほぼ毎日いじってます。娘もお気に入りで、私の部屋から「鳴らしてくれ」と言わんばかりに持ち出したり。音と光だけでなく、曼荼羅のように横にガシャっと開くアナログな仕掛けが好きですね。
ということで、チラ見せされたグランドジオウの能力は、歴代平成ライダーの召喚。しかも、ただ呼び出すというよりは、「任意のタイニングにおける当時の平成ライダーをリプレイする」という感じだろうか。オーズは3話で円柱を破壊したくだりがそのまま再生されていたし、鎧武もタイムゲートの向こうに見える景色が1話のそれでしたね。ビルドも1話の時のものと見て良いかな。
しかしこれ、端的に、最強すぎますね。「過去のライダーの力を使える」を超えて、「過去のライダーを召喚・再演できる」。理論上、全ての平成ライダーの力が無尽蔵に使えてしまう。例えば、一度しか登場していないドガバキフォームや赤目のアルティメットフォームなんて個体も再演できるし、最終回等で特別にパワーアップしたライダーもその例外に無い。「召喚」だけでなく「再演」という属性も持っているあたり、タイムマジーン無しで時を超えるのと同義。ワンモーションで時空超え。まさに「時を統べる」能力。強すぎる・・・。
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次回気になる点として、これがただのリプレイに過ぎない(実際に当時取っていない行動は取れない)のか、あるいは、タイムゲートを超えて召喚した後であればある程度の自由が効くのか。会話まで出来たら幅が広がりそうだけど、その辺りどうなのかな。気になるところ。
といったところで、次回、電王編後編。
ドライブライドウォッチについては、夏映画まで本格継承は持ち越しなのかな。「過去でソウゴが継承したウォッチを未来からゲイツが強奪している」格好なので、「全てのウォッチの継承が済んでいるか」については、間違いなく「YES」なんですよね。かなりアクロバティックな処理だけども・・・。