ジゴワットレポート

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感想『キャプテン・マーベル』 彼女の存在こそが『エンドゲーム』の本当のテーマなのでは

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運良く、公開初日に鑑賞することができた。『アベンジャーズ / エンドゲーム』の公開が控えるこのタイミングとのことで、意地悪を言うならば、『キャプテン・マーベル』は相当ズルい作品である。『インフィニティ・ウォー』の最後に例のポケベルのシーンがあり、そしてこのスケジュールで公開されるとなれば、MCUを追いかけている人ほど鑑賞の義務感に駆られることは必至である。言い換えれば、セールス的に巧いという話なのだが。

 

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そんな同作には、「MCUエピソード0」な性格もあり、そういった面白さは確かに感じられる仕上がりになっていた。

 

シールドが我々の知るシールドの規模になる前、そして、若かりし頃のニック・フューリー。サミュエル・L・ジャクソンの「デジタル若メイク」は相当なもので、これもまた映画の進化の形を堪能できた。例えば『ローグワン』ではCGを使ってキャリー・フィッシャーを出さずともレイア姫を登場させていたり、ピーター・カッシングは亡くなられているのにターキン提督が登場したりと、今や「特殊メイク」も新次元に到達している。まあ、このベクトルの行き着く先は、『猿の惑星』プリクエルのようなモーション・キャプチャーなのだろう。今後、生死を超越した名優の出演がもっと普及したりして。

 

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そんな若きニック・フューリーは、その時点ですでにキャラクターが定まっている感じで、観ていてとても安心感があった。自身の過去を探っていくキャロルを「導く」というよりは、肩を並べて次々と危機を乗り越えていく。そこに、性別も価値観も超えた「プロとしての意思疎通」が図られていたのは、盟友なニュアンスとして申し分なかったと思う。「このコンビ、ずっと観てられるかも」といった、あの感じ。

 

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反面、「すでに異星人の干渉が進んでいた地球」を描くシールド本格創設前の話ではあるが、そこに設定フェチなこだわりは少なく、単に「エピソード0です」という語り口を超えていかない印象もあった。確かに前日譚には前日譚の面白さがあるのだけど、これだけ映画に限らず10年かけて世界観を構築してきたシリーズなので、もうちょっと、いわゆる「設定厨」に向けたサービスがあっても良かったのではないだろうか。まあ、「映画を全部追っている」「ドラマシリーズまで欠かさず観ている」方がマイノリティという判断なのかもしれない。事実、私もドラマの方はほとんど追えていない・・・。

 

キャプテン・マーベルことキャロル・ダンヴァースというキャラクターは、スカッとした風通しの良い存在であった。この辺り、演じるブリー・ラーソンの魅力がとても大きく、何度凹まされても立ち上がる「屈強さ」を演技の端々で体現していた。女性ヒーローの単独作品でいくと、近年では『ワンダーウーマン』が思い起こされるが、こちらがどちらかというと「強く美しい女性」という旨味を持っていたのに対し、キャロルの魅力はあまり「女性性」に立脚していない印象がある。

 

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「女性ならではの」「女性なのに」ではなく、シンプルに「強い」「ポジティブ」「不屈」といった感じ。同じ強い女性というテーマでもアプローチの違いが見られて面白いなあ、と。(言うまでもなくこれは、ガル・ガドットとブリー・ラーソン、両者の異なる魅力のビジュアルに起因するところが大きい)

 

ストーリーでいくと、やや消化不良な感じであった。キャロルの出生の謎をメインの縦軸に置きながら、MCUのエピソード0、地球と異星人の関係性、転じて、争いの発生とそれにめげずに立ち向かっていく姿勢が説かれる訳だが、どうにも箇条書きのプロットを上から順にこなした感じがあり、物語としての厚みがやや薄かったように感じてしまった。

 

これまでのMCU作品では、キャラクターの出生やヒーローになるまでの半生をまず前半で描き(何よりまずキャラの魅力でフックを作り)、そこからオリジンに繋げていく流れで起伏を作る構成が多かったように思う。本作は、その半生を思いっきり「謎解き」の部分に投げてしまったので、観客に向けた序盤のフックが弱い。どこに関心を持って行かれるのか、その宛ての見通しが悪い。その結果か、「こうなってああなって」「これが実はこうだったのでそうなって」という連続性がただ黙々と展開される印象に傾いてしまい、語り口としての巧さはあまり感じられなかった。

 

キャロルがキャラクターとして弱い、というよりは、彼女の魅力的な面が物語の組み立ての中で効果的に活きていない、という印象。ここが少々残念だったように思う。

 

また、90年代が舞台ということで美術の面での工夫が多かったが、どうしてもアクションの組み立てやショットの数々が洗練された2010年代のそれなので、脳が90年代だと上手く誤認してくれない状態もあった。先のキャロルと女性性の話も含めて、作中の時代設定と映画そのものが持つルックやそこに流れる価値観に20年以上の開きがある印象で、例えるなら、時代劇にめちゃくちゃイマドキの眉の整え方をした人が出てくるような、妙な噛み合わなさがあったように思う。「90年代」という時代設定を一番体現していたのは、それこそ「デジタル若メイク」なニックだったかもしれない。

 

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などとやや苦言が多くなったが、私はこの『キャプテン・マーベル』、実はものすごく期待を寄せている。作品を実際に観終えた今も変わらず、だ。それは、昨今ネットで見かけるある意見への反論を含めたものだ。

 

「『エンドゲーム』はMCUの集大成なのに、ぽっと出のキャプテン・マーベルがその逆転の鍵を握るって、どうなの? 現勢力だけでサノスを打倒するから燃えるんじゃないの?」。・・・といった意見を昨今目にすることが多く、気持ちとしてはよく分かるのだけど、私はむしろ「いや、だからこそのキャプテン・マーベルなんでしょ」と思っているのだ。

 

要は、キャプテン・マーベルは、アベンジャーズを知らない存在なのですよ。奇しくも彼女自身がその起源に関わっているのに、他ならぬ彼女がそれを知らない。アベンジャーズの面々はもちろんのこと、その活躍を知っている全地球の人類も、皆が皆アベンジャーズを知っているのに、キャプテン・マーベルだけが知らないのだ。サノスによって、「アベンジャーズを知っている地球の生物」の半分が消滅。そして、残された半数のアベンジャーズが、彼らの信念でもってどうにか足掻こうとする。そこに、アベンジャーズを知らないキャプテン・マーベルが、ニックのコールに応えて宇宙からやってくる。

 

そうなると、やはりそこには、「アベンジャーズとは」というテーマが浮上してくると思うのです。物語のゴール、つまり『エンドゲーム』の本当のテーマは、「サノスを倒すこと」ではなく、「アベンジャーズとは何か」にあるんじゃないかと。『エイジ・オブ・ウルトロン』でヒーローの負の側面を描き、『シビル・ウォー』では内紛が勃発した。永らく、作中の世間ではアベンジャーズに向けた疑心があったと思うんですね。そしてその矢印は、まだどこにも到達していない。『エンドゲーム』では、打倒サノスを通して、「何をもって彼らはアベンジャーズ(正義の下の復讐者・制裁者たち)なのか」が描かれるのだと、私はそう期待しているのです。

 

なので、キャプテン・マーベルは、「究極のルーキー」なのです。チームのイズムを語るには、そのイズムを知らない者が入ってきて、その存在がそれを識る構成にするのが、やはり王道で正道なんじゃないかと。そうすることで、『エンドゲーム』ではまだ終わらないMCUが、「次の世代のアベンジャーズ」を見据えていくのでは、と。「現状の収集」だけでなく、根底のテーマを語りつつ次への継承を兼ねたような、そんなポジションに彼女がいると思うんですよね。

 

キャプテン・マーベルが「スティーブやトニーが積み上げてきたアベンジャーズ」を識り、真の意味で加入したその時こそ、MCUの10年間の本懐が遂げられ、それが結果として、『エンドゲーム』での打倒サノスに繋がるのではないかな、と。実質「最古のアベンジャーズ」にして、「誰よりもアベンジャーズを知らない究極のルーキー」。これが他ならぬ彼女の強さだと思うんです。むしろフォトンブラストより意義が強い。彼女がいるからこそ、既存メンバーの魅力がまた一段と輝くと思うんですよね。

 

つまりは、『エンドゲーム』で彼女にどういう役割が任されるのか、来月それを目撃してはじめて、『キャプテン・マーベル』という作品の感想が着陸できるのかもしれない。そういった意味で、まだまだ引き続き、期待が膨らんでいる訳です。「嗚呼、彼女のこのキャラクターが、既存のメンバーとこう絡むのか」、と。ある程度の「逆算」がそこに込められていると、ついつい疑ってしまうんですよ。

 

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マーベル・シネマティック・ユニバース

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