ジゴワットレポート

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感想『ヴェノム』 魅力的なバディは、その成熟過程が濃密に描かれてこそ映えるはず

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まずは、本作が無事に制作から公開にまで辿り着いた、そこに敬意を表したい。

 

サム・ライミ監督版『スパイダーマン』から、『アメイジング・スパイダーマン』を経て、遂にMCU入りを果たしたスパイダーマンの実写映画シリーズ。ヴェノムと言えば『スパイダーマン3』に登場したものの、それ単独に尺が割かれた訳ではなく、後年の『アメイジング・スパイダーマン』では悪役集団のスピンオフ『シニスター・シックス』の企画も動いていたが、こちらは幻に消え・・・。MCU入りするだの・しないだの、といった噂話も飛び交いながら、やっとこさ『ヴェノム』は銀幕を飾った。本当に、長い年月だった。

 

ヴェノム [Explicit] (ミュージック・フロム・ザ・モーション・ピクチャー)

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しかも、興行成績も良いらしく、作中で可能性が示されまくっていた続編も、無事に作られそうな予感。良かった良かった。

 

 

「人間+非人間のバディ物」は、もはや鉄板の描き方がある程度固まっているように思う。まずは出会いから始まり、最初は反発も多かったコンビが、互いに互いを利用する所から関係をスタートさせ、徐々に互いのキャラクターを理解し、ついに当初そこにあったはずの「利害関係」を超えたモーションにまで辿り着く。「まさか俺がお前を助けるとはな」「キミならやってくれると思ってたよ」、なーんて、粋な台詞が飛び交って拍手喝采な訳だ。

 

このブログの読者層的に、そして私の趣味の範疇でも、やはり「人間+非人間のバディ物」といえば『仮面ライダー電王』の良太郎とモモタロスだったり、『仮面ライダーオーズ』の映司とアンクがすぐに頭に浮かんでくる。まあ、『電王』はバディ関係が中心にありつつ最終的にはチーム物・疑似家族物に寄っていったので、『ヴェノム』を語るならば、この場合『オーズ』の方が近いのかもしれない。

 

S.H.フィギュアーツ アンクスタンドセット

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映司とアンク。人を助けたいという思いがその過去により屈折してしまっていた青年と、欲望のままに自身の完全復活を目指す怪人。それぞれ、強すぎる部分や弱すぎる部分があり、最初は利害関係のコンビだったのが、次第に唯一無二の相棒に育っていく。そして、遂には自己を犠牲にしてでも互いのために動いてしまう。そういった変遷が年間を通して描かれるからこそ、『オーズ』のバディ要素は見応えがあるし、今でもファンの語り草となっている。

 

『ヴェノム』の主人公であるエディ・ブロックは、ジャーナリストとしての取材の果てに、宇宙生命体であるヴェノムに寄生されてしまう。当初は、「ヴェノムと相性の良い人間の肉体」として、そしてエディからしたら、「自身を狙う敵組織と戦う力」として、双方の利害が一致する。凸凹のコンビは、やがてその利害関係を超えたコンビネーションを迎える。・・・と、この大筋は確かに正攻法で、よく出来ている。ヴェノムの、ハードながらチャーミングなキャラクター造形も、実に心地よい。

 

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しかし、肝心の「バディが育っていく過程」が完全に不足しているため、そこに万感の思いは訪れない。なぜヴェノムはエディを「ただの人間」以上に認めるに至ったのか、エディはヴェノムのどこにパートナーとしての絆的な何かを見い出したのか、そこがあまり伝わってこない。そんな肝心の過程が描かれないまま、コンビはどんどん成熟という結果に向かっていく。結果としてのコンビ像は、終盤のやり取りも含め、理想的なバランスだ。しかし、それを成立させるための前段階が圧倒的に物足りない。

 

ヴェノムら宇宙生命体は寄生する人間との相性が大事だと語られ、じゃあエディはその融合係数的な何かがヴェノムと一致した、まさにヴェノムにとっては千載一遇の寄生対象なんだな!・・・と思いきや、すぐに犬や他の人間に寄生しちゃって、何ともなかったりする。え、そこは、「この俺はお前の身体と相性が良い。使ってやるからありがたく思え」な展開では? そこからの、「ただの乗り物だと思ってたお前だが、案外使えるな」を経ての、そしてあのクライマックスじゃないの? 違うのか?

 

などといった、肝心の「エディとヴェノムのバディ成熟過程」が描かれないので、非常に喰い足りない印象になってしまった。むしろ、ここさえ濃密に描けていれば、他の話の筋が例えボロボロでも「あり!!」になる可能性があったと思うのだ。優先すべきは小奇麗な起承転結にまとめることではなく、エディとヴェノムというキャラクターをしっかりと丁寧に描くことだったのではないか。せっかく「負けてきた野郎どもコンビ」という共通項も用意されているのに、それも目立って活かされない。つくづく惜しい。残念に思えてならない。

 

とはいえ、人より少し大きいサイズのヴェノムの不気味な威圧感であったり、「俊敏なゴリラ」的なスピードとパワーを兼ね備えたアクション、破壊たっぷりのカースタントなど、見所は多かった。ぜひ続編では、改めて主役ふたりの関係性を描きながら、新しいヴェノムワールドを描いて欲しいと思う。

 

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