ジゴワットレポート

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感想『映画を進化させる職人たち(映画秘宝セレクション)』 日本映画におけるアクションの「今」が分かる一冊

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映画秘宝セレクション『映画を進化させる職人たち ~日本アクション新時代~』を読了。

洋泉社様よりいただいた献本です。いつもありがとうございます。

 

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そのものズバリ、タイトルどおりの内容で、「日本映画におけるアクションの今」を特集した一冊。

 

その「今」というのも、作品名で挙げると『るろうに剣心』『仮面ライダーフォーゼ』『HiGH&LOW』『GANTZ』あたりを指しており、国内アクション映画を好む人にとって、かなり近年のセレクションになっている。

私のようなアラサー世代にはむしろ直撃だ。

 

本書の大筋は第一線で活躍するアクション監督へのインタビューで構成されているが、冒頭には「アクション監督とは?」という解説コーナーが設けられていたり、「今、この俳優を観ろ!」では佐藤健から土屋太鳳に至るまで注目の俳優をピックアップ、スタントチームの座談会やアクション用語集まで収録されており、この分野に詳しくない人が読んでも分かりやすい内容に仕上がっている。

 

「最近の日本映画のアクションシーン、いいよね」というフワッとした感覚を持っている人にこそ読んで欲しい内容でありながら、しっかりとその入り口として完成されているので、とにかく読みやすい。私も、大変勉強になった。

 

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実写版『るろうに剣心』3部作は私もかなり好きな作品で、そのアクション監督を務められた谷垣健治氏のインタビューおよび制作舞台裏が読めるのは垂涎もの。

 

特に、撮影において(逆刃刀という設定からきたものとはいえ)ラバー素材の刀を使用することで、従来では斬る人と斬られる人の位置関係によって成立していた斬撃アクションを「ガチで当ててそれをしっかり観せる」というやり方にシフトできた、というくだりが最高に面白くて、思わず唸ってしまった。

なるほど確かに、『るろうに剣心』の斬撃アクションの肝は、ガンガンと物理で当てていくあの魅せ方にある。

 

元々『龍馬伝』で大友監督&監督率いる美術チームの作る絵に惚れた人間だったので、やっぱり『るろうに剣心』シリーズは大好きなんですよね。あの汚しの美しさといったら。

本書の谷垣氏インタビューでは、その大友監督とのやり取りも詳細に語られていて、なるほどこうやってあの作品は作られたのね、とワクワクしながら読むことができた。

 

主演・佐藤健氏のストイックさは『仮面ライダー電王』の頃から様々なインタビューで目にしていたけど、『るろうに剣心』でも(良い意味で)相変わらずだったようで。

 

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また、このブログの読者諸君ならば、坂本浩一監督のインタビューが一番アンテナに引っかかるだろうか。

 

 

主に『仮面ライダーフォーゼ』を中心に語られていて、当時の福士蒼汰氏の吸収力の高さとか、東映との打ち合わせを経た独自の制作チーム体制とか、興味深い話が多かった。

 

特に膝を打ったのは、この部分。

 

坂本 ベレッタは形もいいんですよね。『リーサル・ウェポン』のときのメル・ギブソンが超カッコよかった。あれはホルスターを使わずに、剥き身のままここ(ズボンの腰のところ)に差し込んでいるのにすごい憧れました(笑)。リボルバーは、ジャッキー・チェンがよく使ってましたね。『ポリス・ストーリー/香港国際警察』(85年)もそうですし。あれは、弾がなくなるシチュエーションが作りやすいからなんです。オートマチックだと15、6発入りますし、マシンガンで簡単にリロードできる。でも、リボルバーの場合は6発撃ったらなくなっちゃうし、装填にも時間がかかるじゃないですか。弾が切れて、どうしようとあたふたして、意を決してガッと拳を構える。ジャッキーはこれがやりたかったんだと思いますよ。

 

ー ああ!弾が早めに切れるリボルバーじゃなきゃいけないんですね。

 

坂本 装填描写にこだわるのは、ただ単にギミックを見せたいだけじゃないんです。リズムの切り替えという意味もあるんです。『フォーゼ』では、アイテムを使ったり、スイッチを操作するカットを入れることで編集のリズムを作っている部分もあります。単調にならないようにスイッチのカットをあえて入れて、効果音を入れる。速いカット割りとじっくり見せる爆破のカットなどでリズムを変えるという作戦です。これもジャッキー・チェンがアクションシーンを考えるときにリズムで考えると言ったことを、いつも意識してアクションを構成しています。

 

・洋泉社『映画を進化させる職人たち 日本アクション新時代』(別冊映画秘宝編集部 編)P68

 

平成ライダー、主に2期におけるベルトのアイテムの操作タイムは、ともすればスピード感を損なうこともあるが、坂本監督はこれに「ガンアクションにおける弾の装填」のような効果を持たせて撮っている、と。

言われてみればそういうリズム構成になっている。すごい。

 

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どのアクション監督の方も、過去そして海外のアクション映画を意識しながら、今の日本でやれることに果敢に挑戦する意思を語られていて、このジャンルを愛好するひとりとして非常に興味深かった。

同時に、今の国内アクション界が抱える問題点も並べられていて、なるほど業界ではそういうことになっているのね、と。

 

254Pの分量ながら、グイグイ読ませてくれるので、オススメの一冊です。気になった方は、是非に。

 

映画を進化させる職人たち~日本アクション新時代 (映画秘宝セレクション)

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