率直に、とっても面白かったです。
映画界の生ける神話ことMCUの最新作として、そして、この貧困問題とテロが交錯する現代に発表されたエンタメ作品として、とても精度の高い作品だったなあ、と。
なによりワカンダという国の描写ですよね。ビジュアルからディテール、各アイテムのアイデアに至るまで、その魅力がこの作品の良さの多くを占めている。
発展途上国というテクノロジーが進歩していない雄大な大地と、宇宙からの鉱物で独自に発展してきたハイテクノロジー社会の融合。正反対の文化が見事に共生しているビジュアルはまさに圧巻!また上手いこと作り上げたなあ、と。
アイテム的な部分ではこれまでもMCUは色んなアプローチをしてきたけれど、今回は主人公の妹・シュリを科学者に設定することで、機能性と遊び心の双方を宿したアイテムへの説得力が強い。
ゲーム性のある自動操縦や、ダメージを吸収して一気に解放することが可能な新スーツなど、漫画的・ゲーム的なギミックがとにかくワクワクさせてくれる。
スーツの紫色のラインは本当に素晴らしいですよね。
「黒」という色はそれ単体だとただ単に暗くて、他色と組み合わせることでスタイリッシュさを演出できる色なんですよ。それを最大限に活かすべく、スーツに紫の模様を浮かび上がらせ、夜のネオン街で活躍させる。しかも黒塗りの車の上に乗せて、その車もネオン街の風景を次々と写り込ませていく。なんと直球の「かっこよさ」!ビジュアルのパンチ力が凄まじい。
紫色のラインが出る度にダメージが蓄積され、ラインがあればあるほどスーツのビジュアルが完成されていく。つまり、かっこいいほどピンチで、かっこいいほど逆転の一手を有している、という状態。
ストーリーもかなりストレートで王道の盛り上げ方を採択しているけど、ビジュアルの盛り上げ方も冴えてる。格闘ゲームで敵に殴られる度に必殺技ゲージが溜まっていくあの屈折した高揚感を映画で味わえるのがとっても楽しい。
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物語は王位継承をメインにしていて、MCUとしては『マイティ・ソー』に近い作劇とも言える。しかし、『ソー』はもっとファンタジーな愛憎劇&お家騒動に寄せていて、『ブラックパンサー』の方は政治劇を絡めるというアプローチの違いがある。
テクノロジーと財力を他者を助けるために活用するべきなのか、例え自国を危機に晒してもそれを行うべきなのか。かなり分かりやすくフィルターを通して表現されているが、ティ・チャラとキルモンガーの政策の違いは現実のすぐ隣にある。
興味深いのは、ワカンダという国が儀式と伝統を重んじながら独自の発展を遂げてきたことが、シーンの端々から十二分に察せられることだ。
ティ・チャラが継承戦に負けそうになっても、皆は歯を食いしばりながらそれを助けない。他の部族も、儀式の手順に則って挑戦しない意思表明をしたりする。
きっとこれまでも、複数の部族のすれ違いで内紛の危機があったり、諸外国に真実を明かして国際的な立場を確立すべきだと主張する者が現れたり、そういう歴史がワカンダにあったのだろう。
それを特に説明することなく観る者の想像の中に抱かせるほどに、細かな描写への気配りが効いているのだ。基本的にこの映画ではワカンダの「今」しか描かれていないのに、観る者はその背景にある果てしない「歴史」を自然と感じ取ることができる。
キャラクターへの愛着心を抱かせるのが抜群に上手いMCUだが、今回はそのパターンを「架空の国」に転用したとでも言おうか。観た人の多くが、ブラックパンサーはもちろんのこと、他でもない「ワカンダ」への愛着心をたっぷりと覚えていることだろう。
この作品はワカンダという国の在り方やそれを取り巻く人々の思惑のぶつかり合いがメインなので、「ワカンダそのものに愛着を抱かせる」というアプローチは大正解だと言わざるを得ない。
楽しめた人は漏れなく「ワカンダフォーエバー!」と言いながら腕をクロスしたくなる訳で、その目論見は大成功だろう。私も、ワカンダが好きだから、『ブラックパンサー』が好きになった。
あと、音楽がとにかく素晴らしかったですね。
いわゆる「アフリカ音楽」がメインで、手拍子・足拍子・ドラム・笛などをふんだんに使ったリズム感抜群の音楽。そこに伸びのある声が乗っかるのも心地よい。イメージとしては『ライオンキング』的なやつで、聴くだけで雄大な大地と沈む夕陽を連想させてくれる。
かと思いきやゴリゴリのヒップホップがここぞというタイミングで緩急を付けてくれるので、アフリカンに胃がもたれることもない。細かいところまで気が利いている。
物語はもう、序盤の滝のシーンの継承戦だけであまりの気品に溢れたやり取りを観て涙が出てしまったし、観ている人全員が「こいつ絶対美味しいところを持っていくだろ」と分かり切っている中でちゃーんと美味しいところを持っていくジャバリ族のエムバクに興奮し、クライマックスの夕陽のシーンではやはりホロリと涙が落ちた。
夕陽のシーン、ある男の叙事詩のクライマックスとして素晴らしいロケーションだったし、その風景を背負って立つもう一人の男の寛大さと覚悟の象徴としても、この上ない美しさだった。
総じて、『ブラックパンサー』、とっても面白かったです。そしてもう来月には『インフィニティ・ウォー』で陛下にまた会える喜び。最高ですね。
ワカンダ!フォーエバー!
ブラックパンサーが最高の映画だったって、はっきりワカンダね。
— 結騎 了 (@slinky_dog_s11) 2018年3月4日
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