はじめまして。韓国の東映特撮ファンです。海外ファンでありながらこのような意見を発信するのはどうかと思いましたが、作品に反映されなくても、このような意見を持つ人がいるということを伝えたかったのでツイートすることに至りました。#仮面ライダービルド
— SPRING (@sspprriinngg_) 2018年2月22日
こちらの方のツイートが話題になっていまして、はてなでもIDコールを頂戴したので、私なりに思うところを書いておこうかと。
SPRINGさんのツイート: "はじめまして。韓国の東映特撮ファンです。海外ファンでありながらこのような意見を発信するのはどうかと思いましたが、作品に反映されなくても、このような意見
今までのライダーで描かれていたようなメタファーでない、本物の「戦争」を描いたためにかえってアンリアルに見えるという側面は否定できない/id:slinky_dog_s11氏のコメントが欲しい所/反応サンクス
2018/02/24 07:58
SPRINGさんのツイート: "はじめまして。韓国の東映特撮ファンです。海外ファンでありながらこのような意見を発信するのはどうかと思いましたが、作品に反映されなくても、このような意見
- [仮面ライダービルド]
IDコールされたので来ました。何かブログに書くかも。/ 私の考えとして、ヒーロー特撮は子供達の「入り口」だと思っています。悲惨な題材を採択する時、いかに悲惨な様をそうじゃなく、しかしちゃんと悲惨に見せるか
2018/02/24 09:20
前提として、私は1月29日に以下の記事を書きました。
まず、私は日本人で、生まれてこの方韓国の地を踏んだこともないので、先の方が感じられる諸々に完璧に寄り添うことはできません。戦争に対する認識も、実際の祖国の情勢も、私が体感できるものとは条件が違いすぎます。論点が論点なので、安易に想像で語ることもしません。
しかし、戦争をテーマにした作品を観て一連のツイートのような感想を持たれたこと(発信されたこと)について、私は尊敬したいと思います。ひとつの作品にこのような色んな意見が飛び交うのは、素晴らしいことなので。
なので、一連のツイートの意見を尊重した上で、私なりの考えを以下に書き置いておこうかと。
ビルドは今「戦争」をテーマにしています。実際の分断国家の国民として、休戦中の国の国民として、放送前からとても心配だったのですが、想像を超えるその軽くて浅はかな描写に愕然としました。
— SPRING (@sspprriinngg_) 2018年2月22日
なのにビルドの戦争は…実際の戦争に比べると子供のバトルごっこレベルじゃないですか。それが「戦争の本質に迫っている」などと絶賛され、平成ライダーの神作だと言われるなんて。
— SPRING (@sspprriinngg_) 2018年2月22日
戦争も隠してはならない現実です。だからもっとちゃんと、慎重に扱ってほしいのです。面白いとか三國志云々レベルの描写じゃなく。戦争が「面白い」ものだと思いますか?私はとてもそうだとは思えません。そして戦争をテーマにした作品から「面白い」という感想がでてはいけないと思います。
— SPRING (@sspprriinngg_) 2018年2月22日
多くの子供はビルドを見て「あれが戦争なんだ」と学習するでしょう。「戦争は代表戦すればすぐ終わるんだ」と思うかもしれません。実際そのように描いてますから。そこに問題があると、それはとても致命的な問題だと思うのです。面白さや好き嫌いとは全く関係なく。
— SPRING (@sspprriinngg_) 2018年2月22日
「神作」という表現はあまり好きではないので滅多に使わないのですが、私個人は、『ビルド』が「子供のバトルごっこレベル」だとは感じていません。
以下にその理由と思うところを書きますが、おそらく、仮に@sspprriinngg_さんがこの文章を読んでくださったとしても、互いに握手をして相互理解に至ることは無いでしょう。詳しくは後述しますが、決定的なある一点において、@sspprriinngg_さんと私の感想が異なるからです。
でも、ひとつの作品に関する感想がひとつな訳はないし、これはどちらが正しいとか間違っているとか、そういう話でもないので、別に相互理解に至る必要もないと思っています。
ブクマを付けた時に「ヒーロー特撮は子供たちの入り口」というコメントを書いたんですけど、それについては下記のツイートで。
日本で戦争について学ばない子供はいないのです。学校で、平和学習で、時には映画やドラマや漫画で、戦争というものを成長と共に知る(学ぶ)機会が沢山ある。そして同時に、ヒーロー特撮がフィクションの産物であることに、好意的に「気付いて」いく。
— 結騎 了 (@slinky_dog_s11) 2018年2月24日
その時に、戦争を「なんだかよくないもの」として感じさせてくれた原体験にヒーロー特撮があったとしたら、それは良いことだと私は思うんですよ。学びのほんの第一歩として。「こう描いたら子供はこれで理解してしまう!」という主張も分かるんですが、人間の可能性を狭く見積もりすぎではないかと。
— 結騎 了 (@slinky_dog_s11) 2018年2月24日
「戦争という悲惨な題材を、いかにそうじゃなく、しかしちゃんと悲惨に感じさせるか」「後に続く戦争についての学びのほんの第一歩として特撮ヒーローが機能すれば」。この観点でいくと、自分は『ビルド』はギリギリのバランスに踏み込んで頑張ってると思うんですよね。
— 結騎 了 (@slinky_dog_s11) 2018年2月24日
@sspprriinngg_さんは『多くの子供はビルドを見て「あれが戦争なんだ」と学習するでしょう。「戦争は代表戦すればすぐ終わるんだ」と思うかもしれません。』と述べられているんですけど、私はこれは違うと思うんですね。
理由は、(仮面ライダーという番組がメインターゲットにしているのはおそらく小学生以下の子供だと思いますが)、その子供たちが、『ビルド』で戦争に関する知見を完成させるとは思わないからです。
社会の授業では当然、第二次世界大戦を中心に戦争について学びます。平和学習というものがあり、広島・長崎にどのように原爆が落ちたのかもビデオ等を観て学習しました。教科書の記載内容の是非についてはあまりに主題が逸れるのでここでは触れませんが、なぜ第9条が生まれたのか、それがどんな意味なのか、授業の中でしっかりと習った記憶があります。
またそれ以降もあらゆるメディアで、「戦時中なにがあったのか」を目にする機会がありました。自分から情報を獲りに行かなくても、です。
つまり何が言いたいかというと、『ビルド』を観た子供たちが、「戦争は代表戦すればすぐ終わるんだ」と理解したまま大人になるということが、果たして本当にあり得るのだろうか、ということです。
私自身もそうでしたけど、子供から大人になるにつれて、少年少女はヒーロー特撮が嘘の塊だということに気付いていきます。あのスーツの中には知らないおじさんが入っていて、背中にチャックがあって、爆発は火薬をセットしていて、ワイヤーで空を飛んだふうに見せかけていたことを知ります。
でもそれが嘘だったからといって笑い飛ばすのではなく、綺麗ごとだったかもしれない物語の中に、なにか大事なものを学んだような、そんなフワっとした好意的なイメージを抱いて、成長していくものだと思います。それが、先の記事にも書いたような、私が感じる「子供向け」の面白さです。
その何が面白いかというと、表現規制等が厳しい「子供番組」の中で、いかに規制の網の目をかいくぐり、そこに「これまでになかった(もしくは何度でも伝えたい)テーマやメッセージ」を “子供たちに向けて” 盛り込むのか、という部分だ。この、枠組みの中でこそ光る職人芸が、私の毎週の楽しみである。
「子供向け」というのは単に「やさしいせかい」ではなく、大人たちの真剣な創意工夫が込められてやっと「子供向け」の域に達するような、そんな面白さが仮面ライダーやスーパー戦隊には内包されているのだと、一介の特撮オタクとしてそう感じている。
そんな「学び」や「気付き」をこれから沢山体験していく子供たちが、『ビルド』で描かれた戦争の内容を100%盲信したまま成長していくのかについて、非常に疑問に感じるところです。
様々な知見を得ていく成長過程で、幼い頃に観た仮面ライダーの何が嘘だったのか、何が学びだったのか、意識せずとも馴染んでいく部分があるんじゃないだろうか、と。
なので、「『戦争は代表戦すればすぐ終わる』と思うかもしれない」という認識は、あまりにも子供たちの成長の可能性を狭く見積もってはいないだろうか、と、思うのです。
もちろんこれは、逆に私が「子供たちの成長の可能性を広く見積もりすぎ」かもしれません。私が思っているより、子供たちは素直に番組内で描かれたことを吸収したまま大人になるのかもしれません。夢を抱きすぎかもしれません。だから、何度も書くように、どっちが正しいか、という話ではないのです。
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ただ、戦争によって、平和を願っていたはずの主人公サイドが気付いたら侵略に加担してしまったりするシークエンスや、避難所で肩を寄せ合って生活する一般市民のカットが度々インサートされる様子は、戦争を「よくないもの」「こわいもの」として認識するのに、充分に足りると思うんです。
子供たちがまずはその感情を出発点にして「戦争」に対する知見の形成をスタートさせるのは、私としては悪くないことなんじゃないかな、と。
だから、先の記事の最後には、こう書きました。
仮面ライダーを応援する子供たちの心がちょっとだけ締め付けられて、戦争について知る・考えるきっかけとして、『ビルド』は機能しているのかもしれない。
もちろん、「代表戦」という物語展開には、私も思うところがあります。
侵略戦争と銘打って始まった戦争がライダー同士の1on1で決着するのは少し強引だったとも思います。両国がこれ以上消耗したくない(北都側も占拠する東都の土地をこれ以上荒らしたくなかったのかな?)という理屈はありましたが、ちょっと時代劇的な展開だったかなあ、と。
『ビルド』はここの落差を埋めるために、他者の命を奪いかねないハザードトリガーの危険性を強調し、自決の可能性を示唆しながらそれを行使するかもしれないドラマに焦点をスライドさせることで、侵略戦争という東都対北都の構図が実はぼかして決着を迎えたことに煙幕をはっています。「戦争がテーマ」ということを抜きに語れば、非常に計算高く、巧妙です。
最後に、前述した『決定的なある一点において、@sspprriinngg_さんと私の感想が異なる』というのは、戦争というテーマを採択した結果についてです。
私は、「いかに悲惨な様をそうじゃなく、しかしちゃんと悲惨に見せるか」という観点において、可能な表現の中でギリギリ踏み込んでるな、と感じています。
しかしおそらく@sspprriinngg_さんは、「この表現」までしか出来ないのであれば、最初から戦争というテーマを採択するべきではなかった、と思われているのではないでしょうか。
ここはもう、事実として、分かり合えるものではありません。
『ビルド』が良くも悪くもずるいのは、ここまで戦争だと風呂敷を広げておいて、ギリギリのところで「すべてはブラッドスタークという悪者(またはパンドラボックスを配置した外的存在)が仕組んだことだった」という理解を生めるバランスにしているところです。
これが、私なら子供番組で戦争を描く上での巧妙なパズル配置(逃がし方)だと思ってしまいますし、@sspprriinngg_さんは「戦争はそんな浅はかなものじゃない」と思われるでしょう。
戦争をテーマにしたことが良いと思うか、悪いと思うか、踏み込んだと思うか、踏み込み方が浅はかだと思うかは、個々人の感想によります。こういった感想はどうしても肝心の子供の理解の程度を不在にして交わされてしまうのですが、それでも、同じ作品を観る人たちの意見交換そのものは、有益だと思います。
これをするために、後年に観るのではなく、リアルタイムで毎週追っかけているので。
以上、まとまりがなくてすみません。私の思うところの、「仮面ライダービルドと戦争」でした。普段はこんな「ですます調」でブログを書くことは無いのですが、真摯な意見に可能な限り真摯に向き合おうと思ったら、自然とこうなってしまいました。
あと、自分の使う「面白い」は、往々にして「interesting」の意です。
— 結騎 了 (@slinky_dog_s11) 2018年2月24日
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