ジゴワットレポート

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ハリウッド(Netflix)版『デスノート』の感想は「ああ、ワタリ・・・ あなたはどうしてワタリなの・・・?」に尽きる

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Death Note: College Ruled Journal

 

常々自分のTwitterでも書いているが、私は漫画やアニメが実写になった際に「このキャラのここが違う」とか「あのキャラはこんなこと言わない」等と書き並べて批難するのはナンセンスだと思っていて、実写には実写に合った再解釈や変更点があって然るべきだと捉えている。

だから、細かな変更点やビジュアルの違いが云々ではなく、「それがひとつの映像作品として面白いか」「原作の持つ魅力に何らかの再解釈やアプローチが持ち込まれているか」という視点で観ることが多い。

 

原作連載前の読み切り時代から大ファンの『デスノート』も、実写映画二部作にLのスピンオフ、アニメ化に舞台化、ドラマ化と再映画化を経て、いよいよハリウッドで実写化される運びとなった。

本作のハリウッド映画化はかなり前々から報道があったが、中々本格的な製作にこぎつけることはなく、長年のファンとしてはひとつの悲願だったとも言える。

しかも、Netflixによるネット配信公開という比較的新しい手法が採択されたことは、当時の邦画業界では斬新だった「二部作連続公開」を想起させるもので、こちらも長年のファンとしてはニヤニヤしてしまうところである。

 

www.netflix.com

 

これまで本作は幾度と実写化されてきたが、大きくは3つに分けられる。

 

誰もが知っている、藤原竜也主演版と、その後編やLのスピンオフといった一連のシリーズ。

窪田正孝主演の連続ドラマシリーズ。

そして、東出昌大主演の「藤原竜也主演版続編」シリーズ。

ここでは便宜上、「藤原版」「窪田版」「東出版」と呼称したい。

 

「藤原版」は、『デスノート』という作品を決定付けた一種のマスターピースであり、今なお「実写化作品の成功例」として名前が挙がることが多い。

原作の持つ「天才同士の頭脳戦」という要素を丁寧に映像に起こし、特に後篇は「月とLの原作とは違う決着がつく」という展開が話題になった。

結果として、Lの骨を切らせて肉を断つ自殺まがいの作戦でキラが敗北するクライマックスとなっており、私も当時固唾を飲んでその展開を目撃した。(まあ、月のLの生死確認があまりにもおざなりすぎるとか言いたいことはあるが・・・)

 

「窪田版」は、初の連続ドラマとして、原作が元々持っていた「週刊連載作品としての盛り上がりの多さ」を活かす方向性で作られている。

主演・窪田正孝の熱演もとい怪演が注目ポイントで、原作とは異なる「友情に殉じるL」や「次第に闇堕ちしていく成長型の月」といった要素も面白く、新たな『デスノート』の1ページをじっくりと書き上げたことは揺るぎない。

所々ロジックに隙があったり脇が甘すぎたところが惜しくはあったが。

 

しかし、続く「東出版」のガッカリ具合には流石の私も相当凹んだ。

「ひとつの映画として」も、「藤原版の続編として」も、あらゆる角度から面白くない。びっくりするほどに。

画的なスリリングさやビジュアルの良さはあったものの、根本的にシナリオがアレすぎて、ビッグコンテンツのネームバリューに胡坐をかいているのではと疑いたくなる作品であった。

 

そんなこんなで前置きがかなり長くなったが、実質4度目の実写化となるハリウッド版は、果たしてどうだったのか。

結果から言うと、「東出版よりは、まあ、マシなのか?」という感じで、鑑賞してからこの記事を書く気が起こるまでに10日以上を有してしまったことから察していただきたい。

 

最初に書いたように、私は「キャラが違うからどうこう」とか、そういうことは言いたくない。

むしろ、都合4度目の実写化な訳だから、ここでご丁寧に原作をなぞったものが出てきても、それはそれでつまらなく感じていたと思う。

新しい『デスノート』、が観たい訳だ。

 

海外で『デスノート』を作る、となると、連載当時も騒がれた宗教倫理的な側面でどのように解釈されるかが気になることろではあった。

「死神」のイメージや働きぶりもそうだし、悪人を殺して正義を名乗るというやり方は、日本人とは根本的に異なる文化圏にはどのように解釈されているのか。

そして、海外資本ならではの大掛かりなシーンや舞台設定なども、ぜひ観てみたいなあ、と思っていたところだ。

 

この辺りの希望は、死因の決定に干渉するリュークや、観覧車の崩壊など、割と答えに近いものはあった。

 

※以下、映画本編のネタバレがあります。

 

 

詳しい中身の話として、まず興味を惹くのが、キラがかなり早い段階から単独犯ではない、ということだ。

可愛い女の子にホイホイとノートのことを教えて秘密を共有することでカップルになる展開は、むしろ斬新で面白くはあった。

主人公があまりに迂闊すぎとは思うが、わざわざリュークに「お前分かっててやってるんだろうな?」と言わせるあたり、意図的にそう描いているのかもしれない。

そしてその結果、彼女の方が「キラ」に本気になり、所有者であるライトからノートを継承しようと脅す展開など、非常に面白いなあ、と感じて観ていた。

 

『デスノート』と恋愛要素は切っても切れない関係で、原作でもミサが月にベタ惚れなのを良いことに、月はミサを使い捨て同然で使い倒した。

恋愛感情は下手な共犯関係よりよっぽど支配的であり、その危険性にはLも言及していたり。

だから、今回の『デスノート』において、早い段階から恋愛関係であるカップルが「キラ」をやるというのは、月とミサの在り得たかも知れない別の可能性とも考えられるのだ。

 

一方のLは、原作のイメージにあった白を反転させて黒い衣装に身を包んでおり、これは「東出版」の解釈にも通じるところがあった。

原作や過去の実写版よりも雄弁で感情的で、長年連れ添ったワタリが殺された際には動揺して取り乱す。

それで世界的探偵が務まっていたのか? ・・・というのはともかく、「感情的なL」というのは新しいアプローチだ。

しかし、それはいきなりSF銃を持ち出して追いかける展開を補完するには至っておらず、単に「ブレブレで天才っぷりに欠ける男」にしか観えなかったのは、すこぶる残念である。

 

というか、最大の問題点はそこではない。

 

ワタリ、お前だ。ワタリ。

 

 

長年『デスノート』のファンをやっているが、「ワタリがノートに『ワタリ』と書かれて操られた後に死ぬ」という超展開を目にする日がこようとは、思ってもみなかった・・・。

 

これ、もう原作がどうこうとか、そういう次元の問題ではないんですよ。

「LはコードネームでありそのLの本名が分からないからライトはLを敵と知っていても殺せない」という要素は、原作と同じように今作でも描かれている訳で、その前提がありながら「Lの右腕となる男が偽名もコードネームも用いずに右腕やってました」は、あまりにも・・・あまりにも・・・ずさんすぎる・・・・・・!!

 

Lも捜査の過程で殺された犯罪者の報道状況を含めて「キラの殺人には顔と名前が必要」と判断している訳で、この時点でワタリに偽名を名乗らせるとか、時すでに遅しであるならばせめて彼が捜査に加わっていないように身を隠させるとか、そういう判断があって然るべきなんですよ。

 

ワタリが本当にワタリだったの、史上初ですよ・・・。

 

その後のワタリがノートに書かれた以上の指示をまさかの直通電話で受けるとか、それはもう「書いた対象に直接指示を出すことも出来る」というノートだったということにしておきましょう。

「名前を書いても燃やしたら助かる」という新ルールがある以上、我々が知っているそれとは別のルールを有したノートでしょうから。

クライマックスで「彼女がノートを渡すか否かで助かるかどうかが決まる」みたいなびっくり展開も、エクセルのIF関数みたいにルート分岐で条件付けが出来る高性能ノートだったということで良しとしましょう・・・。

 

それにしてもワタリ・・・

君だけは・・・ 君だけはちょっともうどうにもフォローできない・・・

 

ああ、ワタリ・・・ あなたはどうしてワタリなの・・・?

 

と、まあ、ワタリは致命的として色々と脳内補完して観ていた訳ですけど、「新しい『デスノート』」としての様々なアプローチそのものは良いと思うのですが、それがどうにも実らずに終わっていくんですよね。

単純に、活きてこない。

 

「Lがワタリの報復としてノートに名前を書こうとするけど、信条として書けない・・・!」と葛藤するクライマックスもそれはそれで好きなんですけど、それに足りるLの描写があったかというと、無かったと思うんです。(だってワタリが実名で捜査してたらそりゃ殺されるよ・・・)

 

実写シリーズ初の「完全CGじゃないリューク」だったり、主に美術の面で「さすが海の向こうの資金力とノウハウだぜ!!」と思うところはあるものの、「う~ん」が勝ってしまうので印象には残り辛かったです。

 

なんというか、惜しいなあ。本当に。

仕方ないか。全ては微積分の教科書の中で行われたんだから・・・。

 

 

DEATH NOTE モノクロ版 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

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