ジゴワットレポート

映画とか、特撮とか、その時感じたこととか。思いは言葉に。

『トイ・ストーリー4』でウッディがレリゴーしてしまう可能性が怖い

『トイ・ストーリー4』の制作決定が報じられてから、実はずっと不安でして。

 

というのも、やはり前作である『3』があまりにも傑作だったこともあり、その「有終の美」が「有終」じゃなくなる不安があったんですね。しかし、とは言いつつも、ウッディやバズにまた会えるのはそれはそれで嬉しいし、なんだかんだ短編等で「その後」はすでに描かれているし、更に映像的に進化するであろうCGのクオリティも楽しみだし、なるべく前向きな姿勢でいようとは心がけていまして。

 

しかし、先日、待ちに待った予告編が公開され、また一気に期待値が不安一色に染まってしまった。まさか、ははは、まさか、な、大丈夫だよな、大丈夫だよね『トイ・ストーリー』、と。あまりに胸がざわざわしているので、こうして記事にして吐き出すことで、心のバランスを保ちたい・・・。

 

www.youtube.com

 

具体的には、ウッディがレリゴーする怖さなんです。予告を観ていただければ何を言わんとするか、分かっていただけると思いますが。

 

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先に思い出話をしてしまうと、『トイ・ストーリー』は、自分が小学生の頃の作品でして。地元には映画館がなく、親が買ってくれたVHSで出会ったのをよく覚えてます。もう本当に擦り切れるまで観たのですが(書いていて思ったけど今の若い子には「擦り切れるほど観る」という表現が伝わらないのかもしれない)、観れば観るほどに自分が持っているおもちゃも夜中に動いてるのかな、と妄想が膨らむばかりでした。ウルトラマンやスーパー戦隊のおもちゃを持っていたので、夜中に彼らは混合ドリームチームを組んで戦いを繰り広げているんじゃないか、などと、そういう想像をする訳ですね。

 

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そして、『2』を経て、後年の『3』は私が大学生の頃。つまりは、劇中のウッディやバズの持ち主であるアンディと私は、同世代なんですよ。『3』は大学進学先の土地でひとりで観たのですが、実家に置いてきた段ボールの中のおもちゃを思い出して涙が止まらなくなったのをよく覚えてます。最後の、アンディがウッディたちと遊ぶシーン。なんてズルいんだ、と。「アンディ世代」としては、『トイ・ストーリー』3部作をまさにリアルタイムで「生きてきた」感覚があるので、何度観ても胸の奥がグ〜〜っとなるんですよね。

 

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ということで本題に戻ると、まず、あの『3』の続編を作るのかと。本当にそれをやっちゃうのかと。

 

とはいえそれは、『3』の時にも感じたことではあって。『3』のテーマって、実は『2』と根底は同じなんですよね。でも、他ならぬアンディとの別れをクライマックスに据えることで、『2』のテーマ(おもちゃの幸せとは何か)から更に踏み込む形で成立させていた。「こんなに素晴らしいものに続編なんて大丈夫かよ」と不安がよぎった代物といえば、例えば全く畑違いですが、『ダンガンロンパ』にも当時は感じていたことで。これも2作目のクオリティには驚かされましたし、今や関連作が続々と出ていますが・・・。

 

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なので、不安はあるにはあるけれど、やはりクリエイターの方々もそれを分かった上で作るのだろうから、ちゃんと踏まえたものになるだろう。一介の消費者の些細な不安は脇に置いておこう。シンプルに続きが観られる期待に向き合おう。・・・という感じで、冒頭にも書いたように、『4』があること自体は、今や割と楽しみになっていたんです。完全には拭えなくても、それでも。

 

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そこにあの予告ですよ。

 

「相変わらず仲間を助けてばかりね」

「まだ子供部屋にこだわるの?」

「世界はこんなに広いのに!」

「君は持ち主がいなくても平気なんだね」

「あなたも変われる」

 

・・・大丈夫だよね。ウッディ、君がこれまで体現してきた「おもちゃであること」からレリゴーしないよね。『1』でバズにおもちゃの幸せを説き、『2』で博物館行きを蹴り、『3』で新たな持ち主に遊んでもらう幸せを噛み締めたウッディ。大丈夫だよね、持ち主の元を離れたりしないよね? 子供部屋に別れを告げたりしないよね? 「おもちゃの新しい生き方。新しい考え方。俺はそれをやってみたい、変わってみたい」とかにはならないよね?

 

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もう、ここが心配で、夜も眠れず。いや、これは実は嘘で実際は寝息を立ててますが、それでも、ここ数日は小まめに胸がざわざわしてしまうんですよ。

 

もちろん、この問題提起自体が、ウッディによる反証を前提としている可能性も大いにあるのです。「色んな生き方があると思う。でも、今の俺の持ち主は、やっぱりボニーしかいないんだ。彼女に遊んでもらうのが、おもちゃの幸せだと、俺は思う」。ウッディ、君ならこんな感じでボーの誘いを退けてくれるよね。大丈夫だよね。そんな姿を見て「やっぱり君は」ってニンマリした顔を浮かべるバズが横にいるよね。大丈夫だよね??

 

というのも、昨今のディズニーの作品傾向的に、多様性と新たな価値観を推し進めるパターンが多いのが気がかりなのだ。

 

『マレフィセント』『アナと雪の女王』等々に見られる、従来のプリンセス観からの脱却。『スター・ウォーズ / 最後のジェダイ』における血統主義の撤廃。『カーズ / クロスロード』の自らが望む生き方の変更。『シュガー・ラッシュ:オンライン』の既存の役割との決別。昨今のディズニーが関わっている作品の多くが、前時代的な価値観を捨て、与えられた役割から脱却し、生き方の自由選択を促す、といったテーマを推し進めている。いわゆるポリコレ的な面も含め、世界のエンタメを統べる勢いのディズニーがこの手のメッセージを発信するのは、とても意義があると思うし、現代的だとも感じている。

 

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ただ、それをシリーズものでやった時に、発信したいメッセージとそのシリーズが以前から持っていたテーマとの相性において、大なり小なり齟齬が起きてしまわないか、ここに不安を覚えてしまうのだ。

 

「与えられた役割からの脱却」。それは確かに、多様性が叫ばれる近年としては重要なメッセージだ。望まぬ役割を与えられている人は世界中に無数に存在するし、そこから望む方向に一歩を踏み出すキャラクターたちを見て、勇気をもらった人も大勢いるだろう。

 

しかし、『トイ・ストーリー』は、この作品だけは、この列に並ばせて良いのだろうか。この作品はむしろ、「与えられた役割の尊さ」をずっと描いてきた作品だと思うのです。時代と共に価値観は変容していくのかもしれないが、それでも私は、もし昨今のディズニーの作品傾向に沿ってウッディが従来のおもちゃの生き方からレリゴーしてしまうのなら、しばらく立ち直れなくなるだろう。ウッディだけは、彼だけはこの列に並ぶことなく、ずっとそのままでいて欲しい。そう願ってしまうのは、もう十二分に面倒臭い懐古厨マインドなのだろうか。

 

おもちゃの幸せとは何か。ウッディに何かしらの「選択」が迫るであろう『トイ・ストーリー4』は、シリーズファンの自分にとって、天下分け目の決戦とも言える一作。今からもう、武者震いか悪寒か分からない、そんなゾクゾクを覚えてしまう。好きなシリーズの最新作は、いつも一世一代の大勝負なのだ。

 

ウッディ、頼むぞ。俺は信じてるからな。(この文章は、『アナと雪の女王』におけるレリゴーのくだりは一種の「闇堕ち」だという認識を持つ筆者によって書かれています)

 

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感想『キャプテン・マーベル』 彼女の存在こそが『エンドゲーム』の本当のテーマなのでは

運良く、公開初日に鑑賞することができた。『アベンジャーズ / エンドゲーム』の公開が控えるこのタイミングとのことで、意地悪を言うならば、『キャプテン・マーベル』は相当ズルい作品である。『インフィニティ・ウォー』の最後に例のポケベルのシーンがあり、そしてこのスケジュールで公開されるとなれば、MCUを追いかけている人ほど鑑賞の義務感に駆られることは必至である。言い換えれば、セールス的に巧いという話なのだが。

 

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そんな同作には、「MCUエピソード0」な性格もあり、そういった面白さは確かに感じられる仕上がりになっていた。

 

シールドが我々の知るシールドの規模になる前、そして、若かりし頃のニック・フューリー。サミュエル・L・ジャクソンの「デジタル若メイク」は相当なもので、これもまた映画の進化の形を堪能できた。例えば『ローグワン』ではCGを使ってキャリー・フィッシャーを出さずともレイア姫を登場させていたり、ピーター・カッシングは亡くなられているのにターキン提督が登場したりと、今や「特殊メイク」も新次元に到達している。まあ、このベクトルの行き着く先は、『猿の惑星』プリクエルのようなモーション・キャプチャーなのだろう。今後、生死を超越した名優の出演がもっと普及したりして。

 

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そんな若きニック・フューリーは、その時点ですでにキャラクターが定まっている感じで、観ていてとても安心感があった。自身の過去を探っていくキャロルを「導く」というよりは、肩を並べて次々と危機を乗り越えていく。そこに、性別も価値観も超えた「プロとしての意思疎通」が図られていたのは、盟友なニュアンスとして申し分なかったと思う。「このコンビ、ずっと観てられるかも」といった、あの感じ。

 

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反面、「すでに異星人の干渉が進んでいた地球」を描くシールド本格創設前の話ではあるが、そこに設定フェチなこだわりは少なく、単に「エピソード0です」という語り口を超えていかない印象もあった。確かに前日譚には前日譚の面白さがあるのだけど、これだけ映画に限らず10年かけて世界観を構築してきたシリーズなので、もうちょっと、いわゆる「設定厨」に向けたサービスがあっても良かったのではないだろうか。まあ、「映画を全部追っている」「ドラマシリーズまで欠かさず観ている」方がマイノリティという判断なのかもしれない。事実、私もドラマの方はほとんど追えていない・・・。

 

キャプテン・マーベルことキャロル・ダンヴァースというキャラクターは、スカッとした風通しの良い存在であった。この辺り、演じるブリー・ラーソンの魅力がとても大きく、何度凹まされても立ち上がる「屈強さ」を演技の端々で体現していた。女性ヒーローの単独作品でいくと、近年では『ワンダーウーマン』が思い起こされるが、こちらがどちらかというと「強く美しい女性」という旨味を持っていたのに対し、キャロルの魅力はあまり「女性性」に立脚していない印象がある。

 

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「女性ならではの」「女性なのに」ではなく、シンプルに「強い」「ポジティブ」「不屈」といった感じ。同じ強い女性というテーマでもアプローチの違いが見られて面白いなあ、と。(言うまでもなくこれは、ガル・ガドットとブリー・ラーソン、両者の異なる魅力のビジュアルに起因するところが大きい)

 

ストーリーでいくと、やや消化不良な感じであった。キャロルの出生の謎をメインの縦軸に置きながら、MCUのエピソード0、地球と異星人の関係性、転じて、争いの発生とそれにめげずに立ち向かっていく姿勢が説かれる訳だが、どうにも箇条書きのプロットを上から順にこなした感じがあり、物語としての厚みがやや薄かったように感じてしまった。

 

これまでのMCU作品では、キャラクターの出生やヒーローになるまでの半生をまず前半で描き(何よりまずキャラの魅力でフックを作り)、そこからオリジンに繋げていく流れで起伏を作る構成が多かったように思う。本作は、その半生を思いっきり「謎解き」の部分に投げてしまったので、観客に向けた序盤のフックが弱い。どこに関心を持って行かれるのか、その宛ての見通しが悪い。その結果か、「こうなってああなって」「これが実はこうだったのでそうなって」という連続性がただ黙々と展開される印象に傾いてしまい、語り口としての巧さはあまり感じられなかった。

 

キャロルがキャラクターとして弱い、というよりは、彼女の魅力的な面が物語の組み立ての中で効果的に活きていない、という印象。ここが少々残念だったように思う。

 

また、90年代が舞台ということで美術の面での工夫が多かったが、どうしてもアクションの組み立てやショットの数々が洗練された2010年代のそれなので、脳が90年代だと上手く誤認してくれない状態もあった。先のキャロルと女性性の話も含めて、作中の時代設定と映画そのものが持つルックやそこに流れる価値観に20年以上の開きがある印象で、例えるなら、時代劇にめちゃくちゃイマドキの眉の整え方をした人が出てくるような、妙な噛み合わなさがあったように思う。「90年代」という時代設定を一番体現していたのは、それこそ「デジタル若メイク」なニックだったかもしれない。

 

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などとやや苦言が多くなったが、私はこの『キャプテン・マーベル』、実はものすごく期待を寄せている。作品を実際に観終えた今も変わらず、だ。それは、昨今ネットで見かけるある意見への反論を含めたものだ。

 

「『エンドゲーム』はMCUの集大成なのに、ぽっと出のキャプテン・マーベルがその逆転の鍵を握るって、どうなの? 現勢力だけでサノスを打倒するから燃えるんじゃないの?」。・・・といった意見を昨今目にすることが多く、気持ちとしてはよく分かるのだけど、私はむしろ「いや、だからこそのキャプテン・マーベルなんでしょ」と思っているのだ。

 

要は、キャプテン・マーベルは、アベンジャーズを知らない存在なのですよ。奇しくも彼女自身がその起源に関わっているのに、他ならぬ彼女がそれを知らない。アベンジャーズの面々はもちろんのこと、その活躍を知っている全地球の人類も、皆が皆アベンジャーズを知っているのに、キャプテン・マーベルだけが知らないのだ。サノスによって、「アベンジャーズを知っている地球の生物」の半分が消滅。そして、残された半数のアベンジャーズが、彼らの信念でもってどうにか足掻こうとする。そこに、アベンジャーズを知らないキャプテン・マーベルが、ニックのコールに応えて宇宙からやってくる。

 

そうなると、やはりそこには、「アベンジャーズとは」というテーマが浮上してくると思うのです。物語のゴール、つまり『エンドゲーム』の本当のテーマは、「サノスを倒すこと」ではなく、「アベンジャーズとは何か」にあるんじゃないかと。『エイジ・オブ・ウルトロン』でヒーローの負の側面を描き、『シビル・ウォー』では内紛が勃発した。永らく、作中の世間ではアベンジャーズに向けた疑心があったと思うんですね。そしてその矢印は、まだどこにも到達していない。『エンドゲーム』では、打倒サノスを通して、「何をもって彼らはアベンジャーズ(正義の下の復讐者・制裁者たち)なのか」が描かれるのだと、私はそう期待しているのです。

 

なので、キャプテン・マーベルは、「究極のルーキー」なのです。チームのイズムを語るには、そのイズムを知らない者が入ってきて、その存在がそれを識る構成にするのが、やはり王道で正道なんじゃないかと。そうすることで、『エンドゲーム』ではまだ終わらないMCUが、「次の世代のアベンジャーズ」を見据えていくのでは、と。「現状の収集」だけでなく、根底のテーマを語りつつ次への継承を兼ねたような、そんなポジションに彼女がいると思うんですよね。

 

キャプテン・マーベルが「スティーブやトニーが積み上げてきたアベンジャーズ」を識り、真の意味で加入したその時こそ、MCUの10年間の本懐が遂げられ、それが結果として、『エンドゲーム』での打倒サノスに繋がるのではないかな、と。実質「最古のアベンジャーズ」にして、「誰よりもアベンジャーズを知らない究極のルーキー」。これが他ならぬ彼女の強さだと思うんです。むしろフォトンブラストより意義が強い。彼女がいるからこそ、既存メンバーの魅力がまた一段と輝くと思うんですよね。

 

つまりは、『エンドゲーム』で彼女にどういう役割が任されるのか、来月それを目撃してはじめて、『キャプテン・マーベル』という作品の感想が着陸できるのかもしれない。そういった意味で、まだまだ引き続き、期待が膨らんでいる訳です。「嗚呼、彼女のこのキャラクターが、既存のメンバーとこう絡むのか」、と。ある程度の「逆算」がそこに込められていると、ついつい疑ってしまうんですよ。

 

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マーベル・シネマティック・ユニバース

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待望のディズニー動画配信サービス「Disney DELUXE」が遂に発表されてしまった(各種情報のまとめ、感想など)

いやぁ、ついに発表されましたね、「Disney DELUXE」。

 

「ディズニーが自社保有のコンテンツ(ディズニー・ピクサー・スターウォーズ・マーベル)を網羅した定額動画配信サービスを展開する」という話は2017年頃からあって、2018年11月にその名称が「Disney+」だと発表。しかしこの時点では、日本での展開については詳しい情報は無し。

 

www.disney.co.jp

 

そして遂に発表された「Disney DELUXE」ですが、D繋がりなのかドコモと組んで提供される模様。米国での「Disney+」とは別物で、あくまで日本用の「Disney DELUXE」ということらしいですね。「Disney+」も追って日本上陸するのだろうか。

 

 ウォルト・ディズニー・ジャパン(ディズニー)とNTTドコモは3月26日、ディズニー公式エンターテインメントサービス「Disney DELUXE(ディズニーデラックス)」の提供を開始する。月額料金は700円(税別)で、「ディズニー(Disney)」「ピクサー(Pixar)」「マーベル(Marvel)」「スターウォーズ(STAR WARS)」ブランドの動画やコンテンツが見放題、使い放題となる。サービス自体はキャリアフリーだが、利用にはドコモの「dアカウント」とディズニーの「ディズニーアカウント」が必要となる。

 

ディズニー傘下の動画やコンテンツが見放題、使い放題――「Disney DELUXE」始動 月額700円で3月26日スタート(ITmedia Mobile) - Yahoo!ニュース

 

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以下、いくつかの報道記事を横断しての、自分用に各種情報のまとめ。

 

基本情報

 

・2019年3月26日(火)提供開始

・月額700円(税別)

・初回31日間無料

・「dアカウント」「ディズニーアカウント」の双方が必要

・ドコモ以外のユーザーも利用可

・「Disney THEATER」というアプリを使用

 

※「Disney DELUXE」というサービス名は、「Disney THEATER」と同時に展開される「Disney DX」「STAR WARS DX」「MARVEL DX」という計4つのアプリの総称だが、各「~DX」はきせかえやコラム、スタンプや壁紙の配信が主になるため、サービスの主役はあくまで「Disney THEATER」と思われる。

 

視聴環境

 

・スマートフォン、タブレット(Android5以上、iOS11以上)

・PC(Windows7以上、macOS X以上)

・スマートテレビ(Android TV搭載機)

・Amazon FireTV、Amazon FireTV Stick

・Apple TV

・Chromecast(キャスト用のスマートフォンやタブレットが必要)

 

動画配信

 

ディズニー・ピクサー・スターウォーズ・マーベル、4ブランドの新作・旧作映画、TV番組まで。

 

※配信画質はフルHD。

※現時点でダウンロード視聴が可能といった情報は無し。ストリーミングのみと思われる。

 

配信作品

 

報道発表資料 : ディズニー公式エンターテイメントサービス「Disney DELUXE」を提供 | お知らせ | NTTドコモ」より定額制配信サービス初登場作を中心に一部抜粋。

 

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※スター・ウォーズ(実写映画シリーズ)は『1』『6』『フォースの覚醒』『最後のジェダイ』『ローグ・ワン』『ハン・ソロ』のみ

※『ハン・ソロ』は2019年4月配信開始予定

※『マーベル フューチャー・アベンジャーズ』『マーベル ライジング:始動』『スター・ウォーズ レジスタンス』といったTVアニメーションも配信予定

※MCUは『エイジ・オブ・ウルトロン』『ウィンター・ソルジャー』『ダーク・ワールド』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『アントマン』『エージェント・オブ・シールド』のみ

 

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ざっと情報収集してみた雑感として、まず、月額700円は異常に安い。今や世界のエンタメを支配する勢いのディズニーだが、同社が保有するディズニー・ピクサー・スターウォーズ・マーベルの動画配信サービスが700円というのはやはり破格。Amazonプライムの年間3,900円は特例として、NetflixがSD画質のベーシックプランで800円、Huluが933円という現状を考慮すると、かなり勝負してきた印象がある。

 

反面、正直な感想として、ラインナップは期待値を下回る。特に、スター・ウォーズは基本となる6作が揃わないのが致命的であり、最新作『エンドゲーム』を控える時期にあるMCUもかなり歯抜けの状況。『アイアンマン』どころか『アベンジャーズ』まで無いのはどうにかならなかったのか、とも感じてしまう。まあ、ラインナップは今後の追加に期待がかかるところ。前述のプレスリリースには「配信作品の一例」と書かれているので、その「一例」の二文字に願いをかける。

 

しかし、例えばHuluはMCU特集とかよくやってた訳ですけど、「Disney DELUXE」の登場で今後はそういうのが出来なくなってくるのだろうか・・・。

 

視聴環境としては、個人的にはAmazon FireTV Stickに対応してくれたのが嬉しい。ディズニー・ピクサー作品は娘が大好きなものも多いので、それがリビングで観られて、しかも月額700円となれば、検討するファミリー層は多いだろう。ダウンロード機能は現状では確認されず、ストリーミングのみということで、ここもやや残念感はあるが致し方なしといったところ。ダウンロードが可能であれば、外出先で子供相手に大活躍の未来があったのだが・・・。

 

一部では、ウォルト・ディズニー・ジャパンのトニー・エリソン氏(バイスプレジデント&ジェネラルマネジャー ノースアジア メディア担当)による「ディズニーチャンネルの番組、日本で作る新番組もある」というコメントも報道されており、また、ディズニーによる21世紀フォックスのエンタメ部門買収も進んでいることから、ラインナップの強化はジワジワと図られていくのではないかな、とも思われる。

 

とはいえ、もはや世界のエンタメを牛耳る勢いで拡大していくディズニーは、性別年齢を問わないあらゆる層にアピールできる作品を有しているため、今回の「Disney DELUXE」はおそらくものすごい勢いで登録者数を獲得していくのではなかろうか。単純に、保有コンテンツのラインナップが強すぎる。だからこそ、「やっと発表された!やったー!」というより、「遂に発表されてしまった・・・きたか・・・」みたいな、思わず生唾を飲む感覚を味わっている。黒船が過ぎる。

 

しかしまあ、動画配信サービス、もはや間にか当たり前のように根付いてきましたね。「字幕」「吹替」で同じ映画のVHSを2本集めていたあの頃が遠い夢の話のようだ・・・。

 

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感想『スパイダーマン:スパイダーバース』 アメコミ文化の「意義」を体現するしたたかな到達点

2016年の映画で、『GANTZ:O』という作品がある。アニメ化・実写映画化もされた漫画『GANTZ』の大阪編を長編アニメーションとして映画化したもので、綺羅びやかな大阪の街並みやおどろおどろしい妖怪たちがフルCGで描かれた。

 

『GANTZ』という作品は元より非常に独特な作り方で描かれており、実際の写真をコンピュータで取り込んで背景にしたり、着色をデジタルでこなすことにとても意欲的であった。だからこそ、フルCGで描かれた『GANTZ:O』は、作者でなくとも「我が意を得たり」と叫びたくなるほど、原作漫画の持ち味を活かした映像作品になっている。つまりは、ただ二次元の漫画をCGで映像化したというよりは、「この映像こそがまず最初に作者の頭の中にあり、それが漫画に起こされたのかもしれない」と錯覚させてくれるようなアプローチである。

 

GANTZ:O Blu-ray 通常版

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この点、目指す地点としては、『スパイダーマン:スパイダーバース』も近かったのかもしれない。「どこで静止しても全てが漫画のコマのよう」とは、これまでも多くの映像作品で用いられてきた比喩だが、今回のこれはそれまでとは一線を画するほどに、コミックそのものだ。構図はもとより、細かな効果や色の質感、様々なエフェクトにいたるまで、コミックそのままを長編アニメーションとして変換している。

 

つまりは先の例えでいくと、「この映画こそがまず最初にクリエイター陣の頭の中にあり、それがコミックとして描かれたのかもしれない」と妙な錯覚をしてしまうほどに、映像の精度が高いのだ。転じて、漫画を読む我々も、それをただ静止画のまま脳内に放り込んでいく訳ではない。意識・無意識に関わらず、脳内でキャラクターの位置関係が三次元で配置され、時には空気を感じ、匂いもして、台詞は音として流れていく。「漫画を読む」という行為は、「脳内でそれを映像化する」ということなのかもしれない。

 

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『スパイダーバース』は、「コミックの映像化」という一点において、アメコミ映画史に確実に残っていく作品である。更には、ある意味では、『アイアンマン』をはじめとするMCUよりも、「コミックの映像化」という路線では「正道」をいっているのかもしれない。

 

二次元のキャラクターを三次元の俳優がVFXに囲まれながら演じるのではなく、二次元を二次元のまま、「読み手の脳内三次元」というアプローチで映像化する。コミックを描いたクリエイター陣の脳内や、それを読む我々の脳内には、こんな映像が流れているのではないだろうか。そういう意味で、単に長編アニメーションとして優れている以上の、アメコミ映画としての「意義」を感じさせてくれる一作だ。

 

Into the Spider-Verse (Spider-Man)

Into the Spider-Verse (Spider-Man)

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いつもに増して前置きが長くなってしまい恐縮だが、そういった「意義」というニュアンスでは、同作がアカデミー賞(長編アニメーション賞)を獲ったことも実に感慨深い。

 

アメコミ映画の歴史は古いが、ひとつのブレイクスルーとして数えられるサム・ライミ監督版の『スパイダーマン』、そして、今やユニバース構想が映画という産業の形にまで影響を与えているMCUなど、娯楽映画史とそれらは切っても切り離せない関係にある。だからこそ、『スパイダーバース』のようなアプローチを持つ作品がこの規模で制作され、賞レースでも評価されながら、世界中で公開されるという現状こそに、一種の「到達」を見たような気がするのだ。

 

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そんな『スパイダーバース』、日本での公開は3月8日だが、その一週間前の三日間、全国のIMAX劇場で先行上映が行われた。首都圏では怒涛の勢いで試写会が行われ、SNSではすでに観た人の絶賛の声が続出。私も我慢ならず車を走らせ、IMAXのある映画館まで出かけたのであった。

 

同作の宣伝は主に吹替版を推すタイプなのだが、今回のIMAX先行上映は字幕版のみ。私のような待ちきれないファンに先に字幕版を観せ、本公開に向けて更なる口コミの波及を狙い、あわよくば本公開後にもう一度吹替版で観てもらいたい。そんな意図を感じなくもないが、釣られないクマーだかクモーだか、私もおそらくまんまと吹替版を観に行ってしまうのだろう。ムビチケを買い足しておかねば・・・。ちなみに、吹替版は音響監督を岩浪美和氏が担当しており、『ビーストウォーズ』世代としては、血と肉を作ってくれた恩人でもあるのだ。

 

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『スパイダーバース』は同名の原作コミックが存在するが、「別次元のヒーローが一堂に会する」というプロット自体は、今やそう珍しいものではない。

 

日本にもかなり前からこの方法論は輸入されており、ウルトラマンゼロは多次元宇宙を移動するし、キュウレンジャーとギャバンは「お互いが別の宇宙のヒーロー」という前提を難なく相互理解して共闘に至る。ただ、『スパイダーバース』が面白いのは、その「一堂に会する」ヒーローが全員漏れなくスパイダーマンということであり、それは、文化として根付いてきたアメコミ史の懐の深さを象徴している。

 

ピーター・パーカーがマスクを被るスパイダーマンがいれば、女性のスパイダーマンも、豚のスパイダーマンもいる。日本でも78年には東映により映像化されているのは周知の事実だが、このような、「様々なスパイダーマンが存在する」ことこそが、海の向こうのコミック文化が持つ土壌なのだ。日本のヒーローは割と先輩後輩の縦の関係で頭数を増やしていくが、アメコミヒーローは、別次元だのリブートだのの横の関係でバリエーションが増していくパターンが多いように見受けられる。

 

多種多彩な「解釈」を許す土壌、懐の広さ。実写映画に限っても、かなりのハイペースで二度も作り直されたスパイダーマンだが、それでも何度でも受け入れられるのは、そもそものベースに横の発展を受け入れる考え方が根付いているからではないだろうか。

 

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映画『スパイダーバース』は、横軸に存在する複数のスパイダーマンが、主人公・マイルスのいる次元に迷い込む。予告ではまるで「蜘蛛戦隊スパイダーバース!」とでも言いたげな雰囲気だったが、蓋を開けてみれば意外や意外、マイルス以外のスパイダーマンのストーリーはそこまで本筋として扱われない。「バリエーション」や「画の面白さ」として彼らは集合するが、物語はいたってシンプルな「継承モノ」「成長譚」であり、別次元のスパイダーマンたちは「先輩スパイダーマン」というひとつの属性に振り分けられていく。

 

ただ、それは決して「もったいない」という苦言ではない。短い時間の中でこれでもかとキャラクターを立てていく彼らは、マイルスを導く先輩として驚くほど魅力的だ。色んなヒーロー像があり、色んな決断があり、色んな過去がある。「唯一無二のスパイダーマンは放射性のクモに噛まれて・・・」というあらすじ紹介がテンドンのギャグとして炸裂するが、その実、マイルスはメタ的な意味で「アメコミの歴史」そのものを重荷として背負うことになる。

 

アメコミ映画としての「歴史」と「意義」、それらがマイルスという少年の両肩に伸し掛かる。運命を受け入れ、強く決断する美学。そこに斬新なアプローチは特段存在しないが、だからこそ、シンプルな力強さが涙を誘う。

 

「多次元のスパイダーマン」だの、「脳内三次元の映像化」だの、枠組みがそれなりに特殊で凝っているからこそ、中身の物語は王道に王道を掛け合わせたようなバランスだ。複雑さは、シンプルさを際立出せる。そして、その逆も然り。しっかり計算された一作である。製作を『LEGO(R)ムービー』のフィル・ロードとクリストファー・ミラーが担当している辺り、「主人公が直面する運命」なプロットも合わせて、彼らのクレバーなスタイルを改めて実感するところだ。

 

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『スパイダーバース』は、その映像表現の素晴らしさや、バラエティ豊かなスパイダーマン(たち)の集合に注目が集まるが、それらは前述のように、「アメコミ」もとい「アメコミ映画」という歴史を体現したような要素である。こういう映画がこういう規模で成立していることが素晴らしい上に、しかも、中身もしっかり面白い。無敵である。私のような、この手の娯楽作品を愛好する人間にとって、何よりのご褒美な一作だ。

 

終盤、もはや「極彩色」という単語では足りないほどに画面が混沌としていくが、その頃にはすっかり目が慣らされている。冒頭数分、見慣れないエキセントリックな映像表現に少し戸惑い、もしや酔ってしまわないかと不安がよぎったのが嘘のようだ。振り返ってみればこの作品、映画の進行に伴って少しずつ映像表現のアクセルを踏むように調整されており、観客の理解や慣れをコントロールする性格もあったのだろう。重ね重ね、ひどく「したたか」な作品である。

 

アート・オブ・スパイダーマン:スパイダーバース (SPACE SHOWER BOOKS)

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スパイダーバース【限定生産・普及版】

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  • 作者: ダン・スロット,オリビア・コワペル,ジュゼッペ・カムンコリ,秋友克也
  • 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
  • 発売日: 2019/02/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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「リアルサウンド映画部」に『アクアマン』の作品評を寄稿しました

お仕事の報告です。

 

「リアルサウンド映画部」様から依頼を頂戴しまして、『アクアマン』の作品評を寄稿しました。これまでもいくつか執筆依頼をいただいてきましたが、直球に「映画」を扱っているサイトに書くのは初めてでした。ありがたいことです。

 

realsound.jp

 

 

記事提供でYahoo!ニュースにも載っています。

 

headlines.yahoo.co.jp

 

(映画評ということで余計に気負ってしまったのか、いつもブログに書く文章に増してギッッチギチに詰め込みすぎた内容になっていまして、心の中の越前リョーマに「まだまだだね」と言われている気分です・・・。精進します。)

 

『アクアマン』、本当に面白い作品でしたね。何より主人公が魅力的で、作品全体もカラっとしていて。観ていて非常に気持ちが良い。「エンタメ映画とはこうだーッ!くらえー!」というボールが飛んできて、「よーっしゃァ!!」って全身で受け止めるあの感じ。でもそのボールはすごく精密に造形されていて・・・ といったところを、私なりにまとめた内容になっています。

 

「リアルサウンド映画部」様には今後も寄稿を予定しておりますので、その際も何卒、よろしくお願いします。

 

The Art and Making of Aquaman

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