ジゴワットレポート

映画とか、特撮とか、その時感じたこととか。思いは言葉に。

感想『劇場版ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』 バランスの良い脚本を映像はどこまで遵守するべきか

Twitterで過去のツイートを確認してみると、実に5ヶ月ぶりの映画館であった。

 

コロナ禍の影響を受け、公開が延期された『劇場版ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』。『ウルトラマンギンガ』から始まる新世代ウルトラマンの変身者が一堂に会するとあっては、リアルタイムでその発展を追ってきたファンとして、銀幕で見届ける必要があった。時は8月。やっと、やっとこの映画が公開された。まずは何より、その事実を喜びたい。

 

 

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5ヶ月ぶりの映画館は、なんだか懐かしいような、あるいは新鮮なような。映画館特有の、消毒されたカーペットの匂いが鼻孔をくすぐる。お布施の意味も込めてフードコーナーで軽食を仕入れ、いざ劇場へ。まばらな観客。やがて始まった予告編のコーナーは、その全てが「映画館で観るのは初めて」のものだった。当然である。5ヶ月も行っていなかったのだ。こんなに映画館に行かなかったのは、高校生の頃以来かもしれない。

 

さて、そうした奇妙なワクワクと共に鑑賞した、『ニュージェネクライマックス』。近年では東映ヒーローを中心に「和製ヒーロー共演映画」の本数は増大した。それぞれの因縁の敵や、個別作品で関わった先輩後輩。そういった個別の要素を掛け合わせながら、遂に英雄たちが集結し、巨悪に立ち向かっていく。本作も、その王道を踏襲している。

 

本作を語るにおいて、前段として、昨年YouTubeにて公開されたネットムービー『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』に触れる必要があるだろう。坂本監督による果てない熱量が込められた本作は、ニュージェネなウルトラマンたちが持つ個々の文脈をぎっちぎちに詰め込むことで、飽和ギリギリのお祭りテンションを実現することに成功している。また、坂本監督のこだわりだけでなく、脚本を務めた足木淳一郎氏による積年の職人芸も見所だ。(詳しくは下記記事を参照)

 

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変身前の生身の役者は登場せずアフレコのみの出演ではあったが、「ニュージェネレーションヒーローズの集合映画」として、割と満点に近いクオリティを叩き出してしまった。その歴史を土台から支えたウルトラマンゼロの存在や、商業的都合であるキーアイテムの物語への活かし方など、とにかくサービスが過ぎる。

 

つまり、これが何を意味するかというと、多くのファンの『ニュージェネクライマックス』への期待値は、『ウルトラギャラクシーファイト』により爆上がりしていただろう、ということだ。私も例外ではない。「次はいよいよキャストも勢ぞろいするのか!」という、期待の追い風。まずはウルトラマンの宇宙格闘巨編、次に、変身者もそろっての地球での決戦。円谷の映像戦略として、実に上手いことノせてくれる。

 

それに応えるかのように、『ニュージェネクライマックス』は大きく3つの要素をバランスよく脚本に配置し、映画としての強度を高めたかったのだと思われる。事実、その設計に限って言及すれば、完成度は非常に高い。

 

3つの要素とは、「①タイガとタロウの親子物語」「②トライスクワッドの完結編」「③ニュージェネウルトラマンの集結」、である。シナリオ構成におけるこの3要素のバランス感覚はお見事で、MCU(マーベルシネマティックユニバース)を参考にしたという話も十二分に頷ける。偉大な父親という一種のプレッシャーに悩む若きウルトラマンが(①)、仲間との出会いや別れを通して成長し(②)、先輩ウルトラマンと共闘しながら父を救うにまで成長する(③)。大筋は実に良い。

 

また、先輩ウルトラマンたちの登場も、クロスオーバー物として王道の作りだ。すでに昨年の映画で共演を果たしている湊兄弟とリクはセットで登場するし、デジタルに強い研究者タイプの大地はアンドロイドであるピリカと絡み、大人の風格を持つガイさんはカナさんと共にチンピラ怪人とアクションを繰り広げる。今や座長ポジションに収まった礼堂ヒカルは誰よりもタロウのことを心配しているし、「親と子の避けられない戦い」の経験をタイガに向けて苦々しく語るリクも良い。個々の持ってる要素が有機的に絡み合いながら、グリムドとの決戦に向けて物語が収斂していく。

 

テレビシリーズ初回の粗筋と絡めながら、お借りしていた力の返還と共に先輩たちとの交流が描かれ、遂に全員が揃って同時に変身する。街中のセットには、所狭しとウルトラマンたちが立ち並ぶ。実に良い。これもまた、心の底から「観たかったもの」だ。

 

トレギアの過去をいかに描くのか、という点でやや「しこり」を感じるものの、そもそものトレギアというキャラクターの確立や運用面から地続きの問題でもあるので、個人的にはそこまでマイナスには感じられなかった。

 

というのも、『劇場版ウルトラマンR/B セレクト!絆のクリスタル』特装限定版Blu-rayのブックレットによると、デザイン段階ではトレギアの設定がほとんど固まっていなかったことが分かる。この時点で「ウルトラマンの特徴である顔パーツやカラータイマーを封印する」イメージで描かれた仮面や拘束具が、今となっては「グリムドを抑え込んでいた拘束具」にも取れるのがちょっと面白いな、とも思ったり。

 

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そんな「バランスの良い脚本構成」の本作だが、これが大変残念なことに、完成形の映像作品として、「悪い意味でバランスが良い」仕上がりになってしまった。

 

察するに、前述の3要素をシナリオに隙間なく配置して絡ませた結果、撮影や画作りにおいても、その「バランスの良さ」を生真面目に踏襲してしまったのだろう。Aというイベントの後にBが起きる。CはDと絡みながらEに向かう。そういった話の筋そのものは綺麗なのだが(整理が行き届いているのだが)、映像としても、どこか淡々と、ノルマをこなすような印象に傾いていく。

 

はい、次はこれです。その次はこれです。お次はこうなります。まるで、映像そのものが話の筋を読み上げて聞かせてくれるような、奇妙な感覚。特に溜めることもなく、引っ張ることもなく、緩急の幅も決して大きくない。そう、それをやってしまっては、せっかくのバランスの良い脚本に支障を来してしまうかもしれないからだ。とはいえ、それをあまりに遵守した結果か、「同じような盛り上がり」が「同じような頻度」かつ「同じようなテンポ」で淡々と提供されていく・・・。

 

これを最も象徴していたのが、各ウルトラマンのBGMが流れるシーンである。

 

前述の『ニュージェネレーションヒーローズ』では主題歌が流れたので、それを受けるように、各々のメイン劇伴を流す。これは良い。聴き慣れたメロディなので、当然のようにアガる。しかし、個々のアクションシーンに合わせて音楽がブツ切りで挿入されていくため、絶望的に盛り上がらない。淡々と、あるいは機械的に。ここにはこれ。ここにはこれ。結果として、流れ作業のようにも感じられてしまったのだ。(せめて編曲されたメドレー形式ならどれほど良かったか!)

 

変身前の全員が揃うシーンも、もう少し、この感慨深さに浸らせて欲しかった。先輩たちに力を返して、割とすぐに一斉に変身してしまう。確かに、目の前に闇に堕ちたタロウとトレギアがいるので、ここで和気藹々と話す訳にもいかないが・・・。それにしても、どこかノルマを消化するように集うメンバーに、一向に胸のワクワクがブーストしなかったのが本音だ。

 

全方位にバランスよく、複数の要素をこなしていく。一見それは優等生のような作りだが、一転して、「どこも突き抜けていない平均的な作品」になってしまう恐れがある。個性をバランスよく配置した末の、没個性。しかし、ことウルトラマン(特撮ドラマ)に限って言えば、映像的魅力でもって「突き抜け」を設けることができたのではないか。それは例えば、お話の歩みが止まるほどの濃口なアクションか、目を見張るほどの特殊撮影的魅力に満ちたカットか。

 

特撮ドラマにおいて、本来独立して強さを発揮するはずの「映像」が、「お話」のバランスの下に収まってしまったら、どうなるのだろう。『ニュージェネクライマックス』は、その一例と言えてしまうのかもしれない。願わくば、もう少し「逸脱」が欲しかった。

 

遂に立ち並ぶトライスクワッドの共闘や、タイガを強く励ますヒロキ、遠き日のタロウを彷彿とさせるウルトラホーンの出番など、「いいぞ!」となったシーンは沢山あった。重ね重ね、個々の展開は実に良い。無駄なく綺麗にまとまっている。だからこそ、これがもっと「うねる」ような映像構成なら、何倍にも化けたのではないだろうか。「観たかったもの」は確かに観られたはずなのに、どうしようもなく拳が汗をかかないし、胸も高まらない。

 

ウルトラマンレイガが「最強」なのも、映像にそれを実感させられたというよりは、「最強です」と説明されたような感覚なのだ。この表現が、伝わるだろうか。

 

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『ウルトラマンサーガ』における「別に理由なんてねぇよ!ずっと昔からそうやってきた!ただ、それだけのことだ!」について

先日、実業之日本社から発売された『ウルトラマン公式アーカイブ ゼロVSベリアル10周年記念読本』を買ったのですが、これがもう本当に、素晴らしい一冊でして。

 

ウルトラマンゼロの鮮烈なデビューから10年。これまでの活躍に携わってきたキャストやスタッフの証言がとにかくてんこ盛りで収録されており、「こういうのが読みたかった!」と伏して拝むクオリティ。最新作『ウルトラマンZ』関係も豊富で、中でも田口清隆監督による『Z』制作秘話は必読。ホビージャパンから毎年発売されているライダーや戦隊の「公式完全読本」と近いフォーマット(誌面構成)なので、そちらが好きな人には特にオススメです。

 

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そんなこんなで「ウルトラマンゼロ熱」が自分の中で急上昇し、勢いのまま、数年ぶりに映画『ウルトラマンサーガ』を鑑賞。ありがとう、Netflix。思い立ったらすぐに観られるのがありがたい。

 

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『ウルトラマンサーガ』は当時劇場で観て以来大好きな作品で、もう何度繰り返し観たか分からないのだけど、今回も無事に号泣してしまった。瓦礫の中で両親を失って嘆く子供のシーンは、2012年公開というタイミングを考えると、あまりに胸が痛い。トラウマと、虚栄と、それでも懸命に生きる人間を描き、クライマックスではウルトラマンダイナが復活する。この一連のシーンは何度観ても涙腺が緩む。

 

前述のように『ウルトラマンサーガ』は、2011年に起きた東日本大震災の影響を強く受けた作品。エンドロールでは、宇宙における地球の情景から次第に日本にカメラが寄り、最後には東北地方がアップになる。非常にストレートな想いが込められた映画である。

 

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東日本大震災というテーマは、ここ10年ほど、国内特撮作品においても非常に慎重に扱われてきた。

 

ひとつは、人と人とが手を取り合う尊さを描いた『仮面ライダーオーズ』。反対に、底抜けに明るく活気があり、デザイン上の涙ラインを廃して作られた『仮面ライダーフォーゼ』。『特命戦隊ゴーバスターズ』においても、命に対する価値観は時に残酷に描写された。ヒーロージャンルとは異なるが、『シン・ゴジラ』も、東日本大震災を外して語ることはできない。『仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』では、実際の現実世界には助けに来てくれない虚構のヒーローを題材としており、震災の影響が強かったことは各種スタッフインタビューでも触れられている。

 

 

そう、ヒーローは、実際には助けてくれなかったのだ。津波を止めることも、避難を手助けすることも、街を復興することもなかった。東日本大震災において、テレビの中のヒーローたちは、そこから抜け出して来てはくれなかった。沢山の、震災に直面した子供たちを前にして、無情にも無力だったのである。

 

ある種の当然である、フィクションの限界。そういう事実を突きつけられた翌年に公開されたのが、『ウルトラマンサーガ』だ。ウルトラマンがいくらスクリーンの中で戦おうと、現実には誰ひとり救えない。ある意味、これ以上に難しい公開タイミングは無かっただろう。加えて、当時の円谷プロが経営的に厳しかったことは周知の事実であり、テレビシリーズでの現行ウルトラマンも途絶えていたタイミングだ。

 

「ウルトラマン」というコンテンツは、このタイミングで、一体何を発信するのか。あるいは、発信できるのか。それを象徴するのが、作中における、ウルトラマンゼロの台詞である。

 

ハイパーゼットンに立ち向かうウルトラマンゼロ・ダイナ・コスモスを前に、敵役であるバット星人は、吐き捨てるように問う。「ウルトラマン、なぜ貴様らは邪魔をする!なぜ人間に寄り添う!人間… つまらない生き物!」。そこに、ゼロが叫ぶように答えるのだ。「別に理由なんてねぇよ!ずっと昔からそうやってきた!ただ、それだけのことだ!」。放たれる必殺の一撃。倒れるハイパーゼットン。「お前が人間の価値を語るなんざ、2万年早いぜ!」。

 

私はこのゼロの台詞が本当に大好きで、彼の数ある名言の中でも、迷いなくトップに数えたいほどだ。かつて光の国で大罪を犯して追放された生意気な戦士が、数々の戦いを経て、(パラレルとはいえ)遂に地球に降り立ち、人間とウルトラマンの永き関係を知る。そういう彼の背景も併せると、胸にくるものがある。

 

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とはいえ、先の「ずっと昔からそうしてきた」という台詞には、一部に否定的な意見が存在する。その最たるものとして、ライムスター・宇多丸氏が2012年3月に自身のラジオ番組『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』で『ウルトラマンサーガ』を評論した、その一幕が挙げられるだろう。

 

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宇多丸さんの映画評論は私も大ファンで、ほぼ欠かさず聴いているのだけど、感想はおよそ8割が「すごい!なるほど!ほぇ~!」という感じで、残りの2割が「ちょっと待ってくださいよ宇多丸さん!!!そこは!!!そこは違うでしょう!!!ちょっと!!!」、である。10回聴いたら2回くらいは、解釈の違いでラジオに向けてエアプロレスを繰り広げてしまう。そして、『ウルトラマンサーガ』評論については、その2回の方に該当したのだ。

 

冒頭、リスナーメールを読み上げるくだりで、こういう投稿があったことが紹介される。「ウルトラマンたちが人間を守る理由が、昔からそういうもんだから!って、そんなんでいいんですか? ウルトラマンってそういう話なんですか?」。

 

評論の最後の方でも、宇多丸さん自身が、先のシーンについてこう述べている。「バット星人が、なぜ人間なんてものを守るのか、つまらない生き物じゃないかって言うのに対して、あ、これはきっとね、グッとくる台詞で、ガッツリ返してくれるんだろう、と。(中略) それに対してゼロがね、理由なんかねぇよ!ずっと昔からそうしてきた!それだけのことだ! ・・・いや、それちゃんとした理屈で答えないなら、このやり取り自体要らないだろ!かなりがっかりしたけどね、アレね」。なぜそうも雑に答えてしまうのかと、宇多丸さんは、そう疑問を投げかけていた。

 

ちょっと待ってくださいよ宇多丸さん!!!そこは!!!そこは違うでしょう!!!ちょっと!!!・・・いや、分かりますよ。そこに真っすぐな理屈で返答して欲しかったという意見も、分かりはするんです。ただ、この『ウルトラマンサーガ』においては、上映された返答が120点だと、私は思うのです。(念のため補足しておくと、宇多丸さんは評論全体としては、『ウルトラマンサーガ』を絶賛されていました)

 

思うに、本作を語るにおいては、「ウルトラマン」というコンテンツそのものが果たしてきた役割が重要なポイントな訳です。

 

テーマとしては、「ウルトラマンが居る」という、シンプルな一点。それは確かにフィクションの存在だし、実際の災害において誰かを助けることはできなかったけれど、ずっと昔から、そしてこれからも、無数の子供たちに夢や勇気を与えてきたのが、ウルトラマンというコンテンツなのである。子供たちに向けて、「これからもウルトラマンがいるからね」、と。もっと突っ込めば、「ウルトラマンを作って君たちに夢を与えていくからね」という、円谷プロを始めとした作り手の方々の切なメッセージが、この作品には込められているんじゃないかと。

 

もちろん、作中でそんなメタフィクションに繋がるような台詞は出てこないけれど、「辛い時はウルトラマンを観て元気を出してね」「これからも側に居るからね」という信念の語りかけを、随所に感じることができるのだ。これが、2012年当時の、円谷プロによる東日本大震災への「回答」だったのではないか。もちろん、震災後に設立された「ウルトラマン基金」の存在も欠かすことはできないだろう。

 

そう考えると、ウルトラマンダイナに変身するアスカの存在も、非常に大きな意味を持つ。かつて、地球で生き残った子供たちと過ごし、共に歌い、希望を与え続けたアスカ。しかし、ダイナはハイパーゼットンの前に力尽き、その存在を消してしまう。ウルトラマンは助けてはくれない。泣き叫ぼうとも帰ってこない。しかし、そんな絶望の世界に訪れたのも、またウルトラマンだったのだ。

 

1966年に初代『ウルトラマン』が放送を開始し、震災まで45年。常に子供たちに夢を与え、ずっと昔から、そのキラキラした視線を背中で受け止めてきたウルトラマンたち。彼らが無力な時も、それは確かに、あっただろう。それでも、ウルトラマンはずっと君たちの側に居るのだと、そう語りかけてくれたのが、『ウルトラマンサーガ』だった。私も、ウルトラマンを観て育ったひとりとして、このメッセージに強く心を打たれたのだ。

 

「ウルトラマン、なぜ貴様らは邪魔をする!なぜ人間に寄り添う!人間… つまらない生き物!」。「別に理由なんてねぇよ!ずっと昔からそうやってきた!ただ、それだけのことだ!」。

 

啖呵を切るように言い放つゼロからは、「そんな当たり前で野暮なことを一々聞くんじゃねぇ!」と、そういったニュアンスが伝わってくる。ゼロ自身も、初めて地球を訪れ、「地球人とウルトラマンの関係」を紡いでいたアスカの存在に触れた。誰よりも、その関係の尊さを実感していたのは、きっとゼロだったのだろう。ずっと昔から、ウルトラマンは、人間に寄り添ってきたのだ。真の意味で「理由がない」なんてことはない。これは、そんな額面通りに受け取る台詞だろうか。

 

そして、この台詞を述べるシーンで、コスモスとダイナの顔のアップが挿入される。コスモスは2001年に、ダイナは1997年に、その時代の子供たちに寄り添ってきたのだ。ただそれだけのことに、どれだけの意味があっただろう。それは、ウルトラマンを2012年当時に観ている子供たちにも十二分に伝わったと、そう願いたい。「Wow Wow Wow 叫ぼう、世界は終わらない」!

 

君だけを守りたい ~アスカの歌~

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戦いは終わり、アスカはまた宇宙へ、ムサシも自身の星へ帰っていく。しかし、この戦いの中でトラウマを乗り越えて強くなったタイガ(演:DAIGO)だけは、出身ではないパラレルの地球に残り、新しい人生を歩むことを決意する。波が押し寄せる海岸で、そう語るのである。

 

地球を去りゆくゼロは、そんなタイガに敬意を込めるように、「フィニッシュ!」の指ポーズを真似る。そしてこの仕草は、今やゼロお馴染みの決めポーズとして、すっかり定着しているのである。ゼロに歴史あり。ウルトラマンに歴史あり。コロナ禍の影響により、劇場最新作『劇場版ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』の公開は延期になってしまったけれど、これがまた2020年の子供たちに寄り添ってくれることを、期待したい。ただそれだけのことを。

 

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ウルトラマンサーガ超全集

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ウルトラマン公式アーカイブ ゼロVSベリアル10周年記念読本

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ミニライスくん ミニ日記 ベストセレクション『いくじなしのファンファーレ』に育児記事を寄稿しました

お仕事の報告です。

 

サークル「CREATE MALL」さんより販売される『いくじなしのファンファーレ』に、育児記事を寄稿しました。ライスさん( @rice811 )がTwitterで3年に渡り投稿された、ヒーロー大好きミニライスくんの楽しいミニ日記。本書は、その傑作選になります。購入は、BOOTHにて可能です。

 

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rice811.booth.pm

 

ライスさんにはかねてより大変お世話になっておりまして・・・。ご存知の通り、私が現在使っている白い馬のアイコンも、同氏に依頼して描いていただいたものです。今回、恐れ多くも傑作選への寄稿依頼を頂戴し、育児についてテキストを綴りました。

 

元々「CREATE MALL」さんは、東京ビッグサイトで開催されるデザインフェスタvol.51への出店を予定されていて、『いくじなしのファンファーレ』もそこで販売される予定・・・だったの・・・ですが・・・。このコロナ禍でイベント自体が中止になってしまいまして。実のところ、これに合わせて自分も東京に行きたい、なんて計画もあったり無かったり。

 

【重要】「デザインフェスタvol.51」開催中止のご報告 | アートイベント・デザインフェスタ | ART EVENT DESIGN FESTA

 

ライスさんからは「育児」というお題を頂戴したのですが、「デザインフェスタならデザインだろ!」という超短絡な思考により、「育児×デザイン」というテーマを設定。私の思う育児の面白さや難しさ、その奥深さについて、「デザイン」という切り口からまとめてみました。


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といっても、私の文章はぶっちゃけどうでもよくて、やはりミニ日記が本編な訳です!実際の商品ページからは鮮明なサンプルが見られますが、ミニライスくんが仮面ライダー・戦隊・ウルトラマンと過ごす楽しい日々は、特撮ヒーロー好きならもれなく必見です。子供ならではの目の付け所やネタの発見、ごっこ遊びの醍醐味など、「気づき」もいっぱいあります。

 

というか、最終回を踏まえて序盤を読むと、これがまた泣けるんですよ・・・。

 

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A5サイズ(148mm×210mm)、全100ページフルカラーなのに、価格はたったの1,320円。紙質も上質ツルツルなやつで、これはもう、「実質無料概念」が適用されます。こちらの販売ページより、是非ともチェックしてみてください。何卒、よろしくお願いします。

 

 

感想『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』 ニュージェネという歴史の映像化は文脈を渋滞させる

YouTubeにおける新作配信という形態も、今や珍しくなくなった。露出メディアの変遷は猛スピードだ。とはいえ、『ウルトラマンギンガ』から続いてきた通称・ニュージェネレーションの集大成を、まさか配信という舞台で披露するとは。驚きである。

 

「そんな大玉企画、せっかくなら映画の方が良かったのでは・・・!」。そんなファンの複雑な感情をフォローするかのように、追って公開が発表された『劇場版ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』。「声の出演」から更にグレードアップして、「キャスト全員集合」が目玉となる。うーむ、昨今の円谷プロは本当に商売が上手い。(新型コロナの影響で公開延期となったのが悔やまれる・・・!)

 

しかしながら、「ニュージェネ全員集合」「オリジナルキャストが声で参加」「坂本浩一監督」というピースが揃った時点で、『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』が一定のクオリティを魅せてくれることは、もはや既定路線であった。安心と信頼の布陣である。

 

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グリーンバックで撮影されたニュージェネ陣の縦横無尽なアクション。時折挟まれるオープンセットでの乾いた質感。歴史の蓄積を意識させるキャラクター同士のやり取り。その全てが「観たかったもの」であり、期待にしっかり応えてくれる内容であった。「満足度」という文字列がとっても相応しい。

 

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そんな本作を語るにあたっては、まず、近年の円谷プロの変化から触れねばならない。

 

転機は2017年8月。ウォルト・ディズニー・ジャパンでスタジオ部門のゼネラルマネージャーなどを歴任した塚越隆行氏が円谷プロに入社。社長を務められた(現在は会長)。ディズニーでの経験を活かしながら、ウルトラマンを含めた円谷プロが有する数々のIPをいかに活用し、広めるか。

 

昨年末に開催された『TSUBURAYA CONVENTION』も記憶に新しいが、児童向けアニメ『かいじゅうステップ』、舞台ファンの取り込みを狙う『DARKNESS HEELS』、Netflix配信の『ULTRAMAN』など、幅広い展開が今も継続されている。

 

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塚越氏のビジネスマインドについては、「科楽特奏隊」のタカハシヒョウリ氏が聞き手を務められたSPICE掲載のインタビュー記事が非常に分かりやすいので、ここに紹介したい。

 

spice.eplus.jp

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その中の、「ヒーロー集合」について塚越氏が語られた部分を引用する。

 

ポイントだと思うのは、ウルトラマンってすごく日本的だと思ってるんです。さっきの話に戻るけど、世界に向けて!といった時に、「ヒーローものをやっていくということは、じゃあアベンジャーズみたいなものをやるんですか?」とか言われることもあって。ステレオタイプにはそうなっちゃうんだろうけど、僕はそうじゃなくて、せっかく日本で作っているんだから、日本の良いところ、ウルトラマンが持っているデザインや内容もそうだし、その日本人としての良いところというのをちゃんと炙り出して、そこをコアにしようかなと思っています。これが多分、海外の人も良いなと思ってくれるポイントになるんじゃないかなと。

円谷プロ 新社長 塚越隆行 就任後初独占インタビューで「ウルトラマンの未来」を語る | SPICE - エンタメ特化型情報メディア スパイス

 

すでに「アベンジャーズ」は「ヒーロー大集合」の代名詞として定着しているが、彼らと、ウルトラマンを始めとする日本のヒーローは、一体何が違うのか。塚越氏は同インタビューで「日本らしさ」について分析されているが、私のような一般消費者の目線で言えば、何よりシリーズとしての性格の違いが挙げられる。

 

『アベンジャーズ』が「異なるヒーローの大集合」なら、日本のヒーローは、「同じ土壌のヒーロー大集合」なのだ。これは、近いようで決定的に違う。例えるなら、『アベンジャーズ』が「ハンバーガーと八宝菜の共演」で、日本のヒーローが「味噌ラーメンと塩ラーメンの共演」、といった感じだ。ウルトラマンという大きなシリーズ枠の中で生まれ続けたヒーロー、仮面ライダーも、スーパー戦隊も、基本的には同じ土壌内で集結していく。(なので、『ウルトラマンVS仮面ライダー』といった作品がより「アベンジャーズ的」と言えるだろう)

 

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これが意味するものは、同シリーズ内における「縦の関係」である。

 

海外のヒーロー集合文化と比べ、日本のヒーローには「先輩」「後輩」の概念が色濃い。しかもこれは年齢的なものではなく、放送年度が先か後かという、非常にメタ的なキャリア概念を引用した、独特なものとなっている。このため、ニュージェネでいえばギンガ、平成ライダーならクウガといった「初代」は、何かと象徴的に扱われることが多い。最新のヒーローは往々にして「末っ子」に位置付けられ、先輩たちから「ウルトラマン(「仮面ライダー」「スーパー戦隊」)としての生き方」を学び取る。

 

まず先にレギュラーのテレビシリーズがあり、そこに最長一年間での作品リセットが起こる。そうして紡がれてきた同じ土壌のヒーローが、何かの機会に一堂に会する。コミックを源流とするアメコミヒーローの集合とは、どうしても色が異なってくるのだ。そして、だからこそ、その「日本のヒーロー」ならではの旨味を見極めていきたい。

 

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いつもに増して前置きが長くなったが、『ウルトラギャラクシーファイト』は、その「日本ヒーローならではの旨味」をしっかり活かした作りとなっている。シリーズの歴史という名の文脈、「先輩」「後輩」の概念を、作品の基礎にこれでもかと練り込む。ある意味、『アベンジャーズ』には真似ができないアプローチだ。

 

前述のように様々な層に話題を投げかけていく円谷プロだが、今作は、「すでにファンである層」に明確に特化している。ニュージェネを全く観たことがない人には、もしかしたらやや退屈に映るのかもしれない。先のインタビューで塚越氏は、「コアのファンを大事にします」「そして、ファン層を広げます」と語られているが、『ウルトラギャラクシーファイト 』と続く『ニュージェネクライマックス』は前者、先に挙げた多彩な作品群が後者を指すのだろう。

 

海外のヒーローと日本のヒーロー、その文化の違いからくる旨味。そして、円谷プロが仕掛ける様々なビジネスにおける、「既存ファン」へのアプローチ。『ウルトラギャラクシーファイト』という作品の立ち位置は、まさにここにあるのではないだろうか。(言うまでもなく、対象となる「既存ファン」も大きく「昭和」「平成」「ニュージェネ」に分岐しており、それぞれに応じた訴求が行われている)

 

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さて、肝心の物語の内容について。

 

本作では、坂本浩一監督が『仮面ライダー平成ジェネレーションズ』でも引用した『仮面ライダーストロンガー』の「デルザー軍団編」フォーマットをベースに、ニュージェネメンバーが次々と集結していく模様が描かれる。そこに、海外配信を睨んだサプライズとしてのウルトラマンリブット、そして、ニュージェネの原点(まさに「ゼロ」!)ことウルトラマンゼロも参戦と、流石の詰め込みっぷりだ。

 

 

大きな見どころとして、先の「日本ヒーローの旨味」としての「縦の関係」がある。

 

ウルトラマン同士の出会いと、そこで交わされる会話の数々。ニュージェネを追ってきたファンならば、何度ニヤニヤしても終わりが見えない。例えば、『ジード』の映画にはオーブがゲスト出演しており、『ルーブ』の映画にもジードが登場している。そういった個々の年度における新旧の出会いを踏まえつつ、「AとBは知り合いだけとCとは初対面」等の関係性をしっかりと踏襲。細かなやり取りに落とし込んでいく。

 

どんなに事態が切迫しても常にコントなテイストを崩さないルーブ兄弟や、光の国を訪れて感慨にふけるジード。自然とリーダー役に収まる「初代」のギンガに、頼りがいのある精神論でウルトラマンの矜持を語るオーブ。それぞれのキャラクター性が遺憾なく発揮され、期待通りに絡み合っていく。「ウルトラ群像劇」として、これ以上のものは中々見られないだろう。それほどに、楽しく、充実している。

 

この点、坂本浩一監督の作家性が強く反映されているのは勿論のこと、脚本を務めた足木淳一郎氏の功績も大きいと見ている。

 

足木氏は、振り返れば2011年より『電撃ホビーマガジン』で連載されたオリジナル小説企画『Another Genesis』の執筆を担当されている。単行本化されていないのが大変惜しいのだけど、内容としては、 『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』のパラレル解釈版といったところか。ウルトラマンベリアルが登場する、割とハードな内容だったと記憶している。

 

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以降も、『ウルトラファイトビクトリー』『ウルトラファイトオーブ』等ですでに坂本監督とタッグを組んでいたり、ニュージェネ作品群の個別エピソードの脚本、『ウルトラマン列伝』『新ウルトラマン列伝』の構成など、近年の円谷作品群に「大きく」「長く」関わられてきた方である。だからこそ、ニュージェネメンバーの描写にも間違いがない。

 

映像面でいくと、坂本監督の近年の流れである「スピード感と巨大感の共存」がたっぷりと堪能できる。

 

同監督によるグリーンバックでのウルトラアクションといえば 『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』だが、それ以降、ミニチュアワークを活用した従来のSFXの経験を経て、「手数の多いハイスピードなアクション」と「巨体が大地を揺らす存在感」の共存が図られてきた。最近では『騎士竜戦隊リュウソウジャー』の映像も記憶に新しく、一時期定着していた「坂本監督といえばとにかく盛り盛りのアクション!」という評判は、もはや過去のものである。

 

中でも、『ウルトラマンギンガS』等でも印象的だったオープンセットでの映像が素晴らしい。がっつりと合成が効いたフィールドでのアクションも良いが、ウルトラのスーツと自然光の組み合わせには思わず目を奪われる。しかも、乾いた質感というか、コントラストの調整が、どこか『ウルトラマングレート』や『ウルトラマンパワード』を思わせるのだ。海外でのキャリアが長い坂本監督ならではの色合いだろうか。

 

そして、ライダーや戦隊でもお馴染みの「フォームチェンジ・武装ギミックの連続使用」や「強化形態の揃い踏み」も健在である。隙が無い。

 

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私の好む「シリーズの文脈」という視点でいくと、中盤のゼロのくだりが最高であった。

 

今更説明するのも野暮なのだが、『ウルトラマンメビウス』以降テレビでの新作が途絶えていた同シリーズにおいて、ウルトラマンゼロは貴重なキャラクターであった。銀幕での度重なる活躍や、あらゆる局面でのナビゲーターをこなしつつ、ニュージェネ作品群にも様々な形で登場。間違いなく「ニュージェネの影の立役者」であり、だからこそ、多くの後輩たちは彼の力を宿した形態を持っていた。

 

・・・といった歴史の蓄積を活かすように、それぞれがゼロの力を宿した、あるいは受け継いだ力を発揮していくシーンには、思わず胸が熱くなった。あの数分間に、「ニュージェネが歩んだ数年間」がメタ的に横たわっている。素晴らしい。しかも、それを演出するのがゼロのデビュー作を手掛けた坂本監督なのだ。色々と濃すぎる。

 

すすめ! ウルトラマンゼロ

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更にそのお返しとして、ジードが先導し導かれるゼロビヨンド。これがもう、まさに白眉であった。

 

というのも、『ジード』当時に玩具としてリリースされた「ニュージェネレーションカプセルα」と「β」は、あくまで「直近のヒーローというアイコンを利用した玩具」の域を出ていなかった。ビヨンドの力に、ニュージェネは直接的には関わっていなかったのである。「何かと直近のウルトラマンを関わらせた方が子どもたちの反応が良い」、そんな、商業的な「都合」だ。

 

その「都合」を逆に利用するかのように、今作ではニュージェネが直接パワーを分け与えることでゼロを進化させる。「ニュージェネの影の立役者」にスポットが当たる、その瞬間。ゼロとニュージェネが共に歩んだ数年間、その映像化。この発明には感極まらない訳がない。

 

ウルトラマンジード DXウルトラゼロアイNEO

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また、ゼロは海外人気が高いことでも知られており、世界同時配信という形態との相性も良いのだろう。『Ultraman Zero The Chronicle』という番組が国内より先駆けて制作されたのも、今更ながら凄いことである。そういった事情を踏まえた、海外ファンへの目配せとしても気が利いている。

 

 

以前、「特撮ヒーローは現行が旬」という記事を書いた。ポイントとなる部分を後に引用するが、これもまた、「日本ヒーローの旨味」=「縦の関係性」と一部リンクすると言える。

 

『ウルトラギャラクシーファイト』は、まさに「ニュージェネが歩んできた歴史」そのものを映像化したのだ。新旧のウルトラマンが交わり、先輩ウルトラマンの力を借りて戦い、そして、その隣には常にゼロがいた。この構造を、枠組みを、パターンを、鮮やかに物語に落とし込んでいるのだ。

 

また、こういった特撮ヒーローは後年の映画等で作品の垣根を超えて集合するのが常なのだが、この時に、「リアルタイムで追ってきた」というプライスが限界突破で炸裂していく。登場するヒーローの両肩には、我々ひとりひとりの半生が乗っかっているのだ。

 

颯爽と現れる先輩ライダー。彼を一年間追っていたあの頃、自分は就活中でコーヒーをがぶ飲みしながら何枚も履歴書を書いていた。後輩を助ける歴戦のウルトラマン。この作品を観ていた頃は、今はもう離れたあの土地に住んでいて行きつけの居酒屋だってあった。

 

そんな集合作品で展開されるのは、「ヒーロー大集合」に見せかけて、実のところ「僕の・私の半生大集合」なのである。なので、驚くほどに化ける。思い入れと思い入れが渋滞を起こしていくので、涙腺はびっくりするほど緩くなっていくし、胸は自然と高まってしまう。これこそが、「現行を追う」ことの最大の価値なのだと、繰り返し繰り返し実感していく。「よくぞ追っていたぞ、数年前の自分!」と、過去の自分を褒めたくもなってしまう。

 

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つまり今作は、「円谷プロが自社IPを再認識した上での一翼」「ゼロを原点とする近年の円谷プロ再興史」「そこに関わってきたスタッフ陣の作品愛」「日本ヒーローならではの縦の旨味」「ニュージェネシリーズの商業コンテンツ的性格を活かした物語構成」「ファンの同シーズへの思い入れ」といった、まさに要素モリモリの、オタクが語ると話題が大渋滞を起こす、垂涎の一作なのだ。端的に、「ご褒美」である。

 

そしてこの「ご褒美」には、『ニュージェネクライマックス』という第二弾が用意されている。なんとも贅沢だ。メインディッシュが終わったと思ったらメインディッシュが待ち構えている。そして、こうしてニュージェネが総括されていくからこそ、まだ見ぬ「次世代のウルトラマンたち」にも期待が高まるというものである。

 

 

 

ジゴワットレポートの映画ランキング2019

年の瀬恒例、一年間の映画の振り返り。今年はマイホーム計画に奔走したこともあり、近年でも最低クラスの鑑賞本数になってしまった。うーん、まあ、こればっかりはしょうがない。休日はそのほとんどをメーカーや工務店と打ち合わせをしていた気がする。

 

とはいえ、割と「観たいと思っていた映画」は観られたんですよ。「これは外せない!」は、およそ外さなかった。ただ、本数が少なくなると自ずと「予期せぬ出会い」が減ってしまう。あんまり期待していなかったり、あるいは、たまたま時間が空いたから観るような映画に、気持ちよく殴られるあの体験。ダークホースとの出会い。これがまた良い訳ですよ。だから、やはり私はある程度の「数」の目標は定めておきたいなあ、と。

 

そんなこんなで、2019年に劇場で鑑賞した映画から選ぶ、個人的ベスト10です。

 

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10位『ゴジラ / キング・オブ・モンスターズ』監督:マイケル・ドハティ

 

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ(オリジナル・サウンドトラック)

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ゴジラというコンテンツは、時代やクリエイターによって明確に性格が異なる。恐ろしいゴジラもいれば、お茶目なゴジラも、勇敢なゴジラも、異質なゴジラもいる。そういった幅の広さ、つまるところの多様性を、マイケル・ドハティは欲張りにも一本の映画にぎゅうぎゅうに詰め込んだ。だからこそ本作は、ゴジラファンそれぞれに多くの発見があるだろう。

 

キングギドラやラドン、モスラといった東宝有名怪獣が、ハリウッドの最新技術で何の照れもなく暴れ回る。それはもう、豪快に。こんなにも熱い「俺の愛を喰らえ!」を提示されては、同じく怪獣王を愛好してきたオタクのひとりとして、首を垂れない訳にはいかない。

 

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9位『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer』監督:田崎竜太

 

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  • 出版社/メーカー: TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
  • 発売日: 2020/01/08
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これは非常に個人的な話なのだけど、過去のブログ記事でも5月に開催したトークショーにおいても、私は平成ライダーのことを「不揃いで」「混沌とした」「統一感が無いという統一感」のシリーズだと語り続けてきて。だからこそ、平成ライダー最後の劇場版『Over Quartzer』で、それそのものが強烈なメッセージとして打ち出された時、心中でガッツポーズを決めた訳です。いわゆる「解釈一致」というやつ。

 

まあ、今になって考えれば、そうしてある種開き直ってしまわないと「平成ライダー」という枠組み語ることはできないんですけどね。でも、まさかそれを平成という一時代と重ね合わせ、その30年間を生きてきた人達にまで語りかける内容にしてしまうとは・・・。良くも悪くも、平成ライダーにしか作れない作品として、ひどく奇天烈な体験でした。

 

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8位『コンフィデンスマンJP ロマンス編』監督:田中亮

 

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  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • 発売日: 2019/12/04
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テレビシリーズの大ファンだったこともあって、心底楽しめた作品。いわゆる「テレビ的」な演出やキャラクター造形で塗り固められた作品なので、駄目な人はとことん駄目かもしれないけど。ただ、本作がしっかりしているのは、テレビシリーズからそこそこ間が空いた続編だということ。つまり、多くの観客は「色々あってピンチに陥るけど」「騙し騙されが飛び交うけど」「結局主人公たちが勝って終わる」というパターンがかなり身に染みている。重々承知している。

 

そんな観客相手にきっちりと「面白い」を提供するのは、生半可じゃないと思うのです。もちろん、途中でそこそこネタが割れてしまうけれど、演者のエネルギッシュな魅力でそこを気にさせる前にぐいぐい引っ張っていく。長澤まさみの過剰な演技が、最高の煙幕になっている。そういうのを分かって作っているであろう脚本も、クレバーだなあ、と。

 

7位『スパイダーマン / ファー・フロム・ホーム』監督:ジョン・ワッツ

 

Spider-Man: Far from Home

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  • アーティスト:Original Soundtrack
  • 出版社/メーカー: Sony Classical
  • 発売日: 2019/07/05
  • メディア: CD
 

 

普通に映画としての出来も良いのだけど、それより何より、あの『エンドゲーム』の直後にこれを繰り出せるマーベルスタジオに感嘆。映画のユニバース構想を追随する例も少なくないけれど、やはり本家本元であるマーベルが頭一つ抜けているのは、このタイミングで『ファー・フロム・ホーム』を出せるハンドリングにある。ヒーロー大集合映画、その功罪・余韻・余熱に、世界中の観客誰よりも作り手が自覚的。それがなんと恐ろしく、頼もしいことか。

 

また、巨大プールを囲うヴェネツィアのセットや、相変わらず驚異の身体能力を発揮するトム・ホランドなど、映像面もアベレージが高い。ラストのサプライズは超ド級だが、もはや普通に本編そのものの出来が良すぎるので、あまり驚けなかった思い出。感情のリソースが上手く割けなかった。

 

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6位『ミスター・ガラス』監督:M・ナイト・シャマラン

 

Glass (Original Motion Picture Soundtrack)

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  • 発売日: 2019/01/18
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シャラマンユニバースの完結編。Amazonプライムビデオの『ザ・ボーイズ』もそうだけど、これが『エンドゲーム』と同じ2019年に公開されたのが実に良い。「スーパーヒーローは存在するのか?」。その実在性を問いながら、ヒーローというアイコンに何度も何度もメタ解釈を重ねる。どこからがヒーローで、どこまでが人間なのか。そういった禅問答を繰り返しながら、物語は「ヒーロー映画らしい大舞台」に向かっていく。

 

最終的に提示される「フィクションやワンダーを愛そう」というシンプルかつ力強いメッセージは、『エンドゲーム』や他ヒーロー映画に熱中する観客に、今一度足元を見つめ直させる。この熱狂や興奮、その根っこには、ひどくシンプルな「フィクションへの憧れ」があったはずなのだ。複雑な計算式に頭をグルグルさせるタイミングで、ふと教科書の最初に載っている「はじめに」を読んだような、そんな感覚。愛すべき一作。

 

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5位『きみと、波にのれたら』監督:湯浅政明

 

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  • 出版社/メーカー: 東宝
  • 発売日: 2019/12/18
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もっと上位でも良かったかもしれない、そんな一作。とにかく泣いた。ボロッボロに泣いた。「音楽と人生」についてこういう掘り下げ方をされると実に弱いのだ。今でも、聴くだけで人生を思い出す音楽が沢山ある。景色も、人も、その時の感情も。そういった誰もが抱く普遍的な体験を通して、青春ラブストーリーから少しのホラーへ、そしてフィクションを膨らませた大きなオチにまで持っていく。

 

興行収入的に振るわなかったらしく、作品のファンとして残念。『君の名は。』の大ヒット以降アニメーション映画が増えたと聞いているけども、その類型に数えられてしまったのだろうか。ぜひ、沢山の人に、恋人同士や夫婦で観て欲しいと願う。

 

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4位『劇場版ウルトラマンR/B セレクト!絆のクリスタル』監督:武居正能

 

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  • 出版社/メーカー: バンダイナムコアーツ
  • 発売日: 2019/07/26
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これはもう、映像の勝利。クライマックスに現れるウルトラマングルーブ、それがフルCGで描かれている。ストーリーやその他のシーンも勿論大好きなのだけど(本編では兄妹を引っ張る役回りだったカツミにスポットが当てられている)、そのフルCGの一点突破でこの順位。とにかく感涙してしまった。こんなに胸が高まって、良い意味でざわついたウルトラ映画も、久々だったかもしれない。

 

ウルトラマンのCG描写でいえば、平成三部作を経て、『ネクサス』の板野サーカスや坂本浩一監督によるアクロバティックなアクションなど、その歴史は着実に重ねられてきた。その流れの最新作として本作が挑戦したのは、従来の特撮であるSFXとの完全融合。スーツのウルトラマンとCGのウルトラマンが共に並び、CGのウルトラマンが吹っ飛ぶとミニチュアのビルが崩壊する。まさに、こんなハイブリッドが長年観たかったのである。歴史的な一歩ですよ、これは。

 

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3位『アルキメデスの大戦』監督:山崎貴

 

アルキメデスの大戦 DVD 通常版

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  • 出版社/メーカー: 東宝
  • 発売日: 2020/01/22
  • メディア: DVD
 

 

菅田将暉主演というだけで加点が大きいのだけど、これはもうラストの展開が全てを持っていってくれた。まず前提として、「お偉いさん」たちの惨めな足の引っ張り合いとプライドの張り合いに、数学という合理的な拳で殴りに行く構造が痛快。そして、本当にその数学が得意な菅田将暉が、お得意のまくし立てる演技で数式を書き殴るシーンの迫力も良い。「変人天才もの」「バディもの」としても観たいものを観せてくれる。

 

そんな積み上げの果てに訪れるクライマックスの「決断」。これがまあ、実に良かった。数学という合理性を信奉してきた主人公、だからこその判断。悪魔と相乗りする勇気。「結局、戦艦大和は建造されて沈没してしまう」という、日本人なら誰もが知っている結末の手前に置かれたどんでん返し。この原作からの脚色に、見事に一本を取られた。

 

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2位『ジョン・ウィック / パラベラム』監督:チャド・スタエルスキ

 

John Wick: Chapter 3--Parabellum (Original Motion Picture Soundtrack)

John Wick: Chapter 3--Parabellum (Original Motion Picture Soundtrack)

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  • アーティスト:Joel J. Richard
  • 出版社/メーカー: Varese Sarabande
  • 発売日: 2019/06/07
  • メディア: CD
 

 

期待していた続編が期待通りに、いや、期待以上に面白い。それほど幸せなことはない。同シリーズのポイントは、回を増すごとに色んな意味でアップデートが重ねられていること。一作目より二作目が、二作目より三作目が。それはアクションの凝りようやバリエーションに限らず、世界観の広がり、設定の深化においても同様。一作目の頃は、まさかここまで最高に馬鹿馬鹿しい世界になるとは思ってもみなかった。

 

復讐中毒に陥った主人公は、より一層、世界への怒りを加速させる。何かと「落とし所」を求められる日常において、スクリーンの中でひたすらに突き進むキアヌは、ある意味で眩しい。もちろん、あんな狂人じみたアクションも立ち回りもできないけれど、我々が実社会で抱く小さな破壊衝動を何倍にも増幅して代行してくれているような、そんな爽快感があるのだ。爽快、痛快、大喝采。

 

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1位『アベンジャーズ / エンドゲーム』監督:アンソニー・ルッソ ジョー・ルッソ

 

Avengers: Endgame

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  • アーティスト:Original Soundtrack
  • 出版社/メーカー: Hollywood Rec
  • 発売日: 2019/05/31
  • メディア: CD
 

 

いや、まあ、これはもうしょうがないですよ・・・。もはや不可抗力。色々と悩んだというか、皆が大好きなこれをわざわざ1位にしなくても、もっと自分らしいセレクトがあるんじゃないか、とか、とか、とか。でも、考えれば考えるほど、これを今年の首位にしないのは自分への嘘に他ならないと、そういう結論が台頭してくる訳です。うん、そうだよね。やはり2019年は、「アベンジャーズが完結した年」ですよ。間違いない。

 

前世界中のファンが無意識に設定していたハードル。「結局全員が復活してアッセンブルするんでしょ?」。それを叶えつつ、予想していたファンまでもをまんまと感涙させる構成の確かさ。前作の絶望的なエンディングから一転、割と軽快なテンポでの幕開け。タイムスリップという形で、ユニバースそのものを本家本元が同人ノリで扱う懐の大きさ。「面白い」というシンプルな答えに向けて、妥協せず、挑戦しつつ、ひたすらに突き詰めたであろうことが全編を通して伝わってくる。

 

ここまでのシリーズ、連作を、見事にコントロールしてみせたその手腕に感服。「挑戦」と「王道」のバランス、オタク心をくすぐる描写の数々、愛すべきキャラクターの創造、ユニバースだからこその流れを意識した展開。ケヴィン・ファイギ、宗教法人を立ち上げてくれ。入ります。

 

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・・・といった感じで、2019年の個人的ベスト10でした。やっぱりこうして並べてみると、ベスト10に選ぶような作品はほとんど感想記事を書いてますね。観た映画の全ての感想を残している訳ではないのですが、やはり記憶に残る・強い感銘を受けた作品は、いても立ってもいられずに打鍵している、ということか。

 

今年は、アベンジャーズもX-MENもスター・ウォーズもそれぞれ一旦の「終わり」を迎えるということで、エンタメ映画好きには何かと忙しい一年でした。来年も、良い映画と出会えますように。

 

ブログも年末進行ということで、色々と振り返り系の記事も書かねば・・・!

 

映画秘宝 2020年 02 月号 [雑誌]

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  • 出版社/メーカー: 洋泉社
  • 発売日: 2019/12/21
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