ジゴワットレポート

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複数のジャンルを強欲に取り込む『進撃の巨人』の魅力。いつも「最新巻が一番面白い」からすごい

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『進撃の巨人』は単行本で読んでいるが、毎度のように驚くのが、常に「最新巻がこれまでで一番面白いのでは?」と感じられるところだ。20巻を超えて今なお続く作品にこの感覚を抱けるほど、幸せなことはない。

 

この論法でいくと、おそらく別マガ読者はこれを毎月ペースで感じているのだろう。

 

進撃の巨人(25) (週刊少年マガジンコミックス)

 

進撃の巨人(25) (週刊少年マガジンコミックス)

進撃の巨人(25) (週刊少年マガジンコミックス)

 

 

最新25巻では、ついに本格的に「海の向こう」に戦場が移った。あのキャラもあのキャラも再登場し、色んな意味で驚くべき「戦い」が繰り広げられる。「ああ、ついにこの一線を越えてしまったのね・・・」というショックと、もう引き返せない作中現実の殺伐さに、ページをめくる手が止まらなかった。

 

先日、私が思う『進撃の巨人』の面白さについて、このようにツイートした。

 

 

たまに、あまりちゃんと読んでいない人と本作の話をすると、「人が巨人に食べられるんだよね」「その巨人と戦うストーリーだよね」という会話が発生する。

確かにそれは全く間違っていないのだけど、『進撃』はそれらを入口にしてすでに途方もない地平にまで辿り着いているからこそ、面白いのである。

 

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ツイートに書いたように、多くの「あまり読んでいない人」が持っているイメージは、【閉塞型不条理食人デスゲーム風味】だろう。(なんてテンポの悪い表現だ・・・)

 

さかのぼれば『リアル鬼ごっこ』もそのジャンルに数えられるかもしれない、いわゆる「デスゲームもの」が流行って久しいが、『進撃』もニュアンスとしては遠くない。もちろん、ゲーム要素は作中には無いが、不条理な死が急にグロテスクを伴って襲い掛かる読み味は、分類として遠くない。

そこに「食人」の要素が絡むので、『寄生獣』や『東京喰種』あたりにも近く、色んな意味で「流行り」のジャンルに属するとも言えてしまうだろう。

閉塞性があるのも良い。意外とヒットした映画『メイズランナー』を思い出す。

 

進撃の巨人(1) (週刊少年マガジンコミックス)

進撃の巨人(1) (週刊少年マガジンコミックス)

 

 

しかしそこから、急に【変身特撮】の面白さが参入する。

昔からウルトラマンを愛好して育った人間なので、主人公が巨人化して戦う展開に心からときめいたのをよく覚えている。サイズ感で言えばウルトラマンだし、異形の巨体が人々をなぎ払うのは怪獣映画だし、「敵と同じ力を有する」という部分を切り取れば、仮面ライダーだ。

一気にヒーローものの魅力が伴いだした原作序盤は、何度読んでもワクワクする。

 

その、未知の巨人の力に戸惑いながら、同時に【同期学園モノ】の面白さも増していく。

特に4巻あたりは、原作序盤ながらしっかりと過去編や回想シーンを挟み、二度目の超大型巨人の襲来で死線をさまよう同期たちの今と過去を同時進行で描いた。『進撃』特有のナンセンスギャグを挟みながら、なんだかんだ仲良くやっていた皆が次々と死の恐怖に直面する。戦争作品における「訓練兵モノ」にも近い。

 

進撃の巨人(2) (週刊少年マガジンコミックス)

進撃の巨人(2) (週刊少年マガジンコミックス)

 
進撃の巨人(4) (講談社コミックス)

進撃の巨人(4) (講談社コミックス)

 

 

そんな、同期の関係をしっかりと印象付けておきながら、物語は【犯人探しミステリー】にシフト。

じわじわと「仲間の中に敵がいる」ことが判明し、女型の巨人との戦い、超大型巨人と鎧の巨人の正体判明と、主人公と読者を幾度となく絶望に陥れていく。

 

状況証拠と物的証拠、それを知る登場人物たちが満足に連絡を取り合えない危機的状況など、読者に不安な予想をさせつつもギリギリまで答えを提示しないミステリーとしての練り込み具合。

作品のアイコンとも言える超大型巨人の正体を「ああいう演出」で明かす作者の、この上ない意地の悪さ。読んでいてあれほど心臓がバクバク鳴った漫画も無かったかもしれない。

 

進撃の巨人(8) (週刊少年マガジンコミックス)

進撃の巨人(8) (週刊少年マガジンコミックス)

 

 

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ミステリー要素と同時進行で魅力が増していくのは、【能力バトル】の様相だ。

 

序盤から「硬質化」などは度々説明されてきたが、超大型巨人の「発熱」、女型の巨人の「機動力」、鎧の巨人の「超硬質化」、獣の巨人の「巨人操作」など、この辺りから一気に能力的な戦略性が高まってくる。

これにより、巨人バトルにおける相性問題や、それと協力する人間たちとどう戦略を立てるか、一度巨人になると回復まで時間を要するタイムロスの概念などが持ち込まれ、巨人同士のインファイト中心だった戦いの幅が一気に広がった。

 

進撃の巨人(11) (週刊少年マガジンコミックス)

進撃の巨人(11) (週刊少年マガジンコミックス)

 

 

かと思いきや、今度は【血筋と運命のSFモノ】に舵を切る。

このまま裏切り・裏切られの巨人バトルに傾倒するかと思いきや、今一度主人公の過去に視点を戻し、一気にファンタジー色を強くする。

 

巨人の能力の継承という概念が改めて提示されることで、現在主人公たちが直面している事態が「誰に」仕組まれたものなのか、「どこまで」が敵の思惑なのか、不安が加速度的に増していく。

これまでは、(さかのぼっても主人公たちの訓練時代で)原則として今目の前で起きている戦いを描いていたが、ここで一気に「それよりもっと前から物語は始まっていた」ことが明かされる。物語の時間軸が広がったのだ。

 

「そもそも巨人とは、なんなんだ?」。この回答に、何度も何度も新しい答えが重なっていく様は、痛快である。

 

進撃の巨人(16) (週刊少年マガジンコミックス)

進撃の巨人(16) (週刊少年マガジンコミックス)

 

 

同時に【政権交代の政治劇】も繰り広げられ、現場で戦う人間と、国の中心でクーデターを行う人間の、組織的な戦いが魅力になっていく。

巨人同士がガシガシ殴り合う楽しさもありつつ、こういったロジカルな頭脳戦、大義名分とマニフェストの応酬が展開されるのも本作の大きな魅力だ。

マスコミによる世論操作とそれを利用しての逆転劇が組み込まれていたのも良かった。

 

進撃の巨人(17) (週刊少年マガジンコミックス)

進撃の巨人(17) (週刊少年マガジンコミックス)

 

 

そして「海」のくだりまでは、ここまで挙げた全ての要素を総括しながら、巨人の謎や世界の謎を解き明かしていくのだ。

 

読者が想像していた物語の「範囲」が何度も塗りかえられていく面白さは、中々味わえるものではない。上で「物語の時間軸が広まった」と書いたが、ここにきて、「物語の地理的な横軸」もグッと広まり、壮大なるディストピアを描いていたことが劇的に確定する。

 

進撃の巨人(22) (講談社コミックス)

進撃の巨人(22) (講談社コミックス)

 

 

そして最新25巻に続くまでは、【差別と工作員が行き交う戦争・紛争テーマ】に大規模に突入しながら、【軍事産業としての巨人】という側面がクローズアップされていく。

 

近代兵器と巨人兵器の比較論も持ち込まれ、多種多様な能力を持つ巨人をどう戦略的に兵器として活かすか、また、その力を獲得するために兵士たちがどのような人生を強いられているかが描写されていく。

差別される側を差別する側が、また別の者たちに差別される。止まらない歴史の負の連鎖と、それに足掻き続ける複数の民族は、ついに大陸を超えて本格的な戦争に突入していく。

 

進撃の巨人(23) (講談社コミックス)

進撃の巨人(23) (講談社コミックス)

 

 

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雑食と言えてしまうほどに様々なテーマを取り込み、物語の進行と共にその比重を移し替えていくことで、一口ではとても語り切れない「面白さ」が重なっていく。

これが、『進撃の巨人』の魅力だ。

 

しかも、俯瞰して大筋を追ってみると、いわゆる「流行りのジャンル」から、ヒーローやミステリーといった「鉄板のジャンル」、そして戦争テーマ等の「歴史が深いジャンル」へと、様々なエンターテインメントが披露してきた「面白さ」の流行を歴史的に逆走しているとも言えてしまう。

なので、読めば読むほどものすごく普遍的な面白さに波及していくし、フィクションがその作中設定を飛び越えて、我々の現実に近い歪さを醸し出すにまで至る。

「まさかここまでとは」と、何度この作品に思い知らされたことだろう。

 

また、最初からずっと印象的な「壁」という大きな存在、作品のシンボルとも言えるその囲いが壊される度に、作品のテーマやその時々の「敵」も移り変わっていくのだ。

今や「海」すらも最大の「壁」だし、超えれば次の敵が、壊せば次の敵が、何度も複雑に立ち塞がる。

 

『進撃の巨人』における「敵」は、もはや、人を食べる巨人ではない。では、巨人になって立ち塞がるかつての仲間かというと、それも今や違ってきている。

 

本当の敵は誰なのか、いや、「なに」なのか。いつの世も存在する「差別」か、誰かにしわ寄せがいかなければならない「不条理」か。

様々なエンターテインメントの要素を強欲に取り入れながら、物語が地理的に「広く」なるほどに、問題の根幹が読者に「近く」なる。

この反比例する構造を仕掛ける作者の計算高さに、毎度驚かされてばかりである。

 

そして何より、「ちゃんと終わりに向かってそう」なのが素晴らしい。早く結末を読みたいけど、もう少し翻弄されていたい。なんとも幸せなことである。

 

進撃の巨人(25) (週刊少年マガジンコミックス)

進撃の巨人(25) (週刊少年マガジンコミックス)