ジゴワットレポート

映画とか、特撮とか、その時感じたこととか。思いは言葉に。

久々に読んだジョジョ6部序盤がびっくりするほど面白かった

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ジョジョの歴史を一旦収束させてしまったことで知られる6部「ストーンオーシャン」。改めて振り返ると6部は全17巻で、連載中の8部「ジョジョリオン」も本稿執筆時点で最新刊は17巻。8部、こう考えると長く続いてるなあ。

 

ストーンオーシャン―ジョジョの奇妙な冒険 Part6 (2) (ジャンプ・コミックス)

ストーンオーシャン 2 ジョジョの奇妙な冒険 第6部 (ジャンプコミックス)

ストーンオーシャン 2 ジョジョの奇妙な冒険 第6部 (ジャンプコミックス)

 

 

何の気なしに「久々に6部を読もう」と思い立ち単行本を手に取ると、承太郎がDISCを奪われて徐倫があえて脱獄を放棄する(父のために敵を追う)決意をする3巻まで、一気に読み進めてしまった。分かってはいたが、やっぱり、びっくりするほど面白い。

 

ジョジョの奇妙な冒険 第7部 モノクロ版 24 (ジャンプコミックスDIGITAL)

ジョジョの奇妙な冒険 第7部 モノクロ版 24 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 

 

後年の7部で『ジョジョの奇妙な冒険』というタイトルを脇に置いたあたり、この頃の荒木先生は「一見さんにどうジョジョを読ませるか」という意識が多少なりとあったのかな、という気がする。6部で単行本のナンバリングを実質リセットしたのもそうだ。

 

徐倫が体を小さくするスタンド「グーグー・ドールズ」に襲われるくだりでも、ものすごく丁寧にスタンドそのものを解説してくれる。徐倫を通して、「ストーンオーシャンから入った人」(当時どれだけいたのかは置いておいて)へのフォローを入れているようだ。

 

こいつは「エネルギーの形」なんだわッ!

よく見ると 背後の鉄格子とか床が 透けて見える......

この不気味なヤツはあの女!

グェスの「心のパワー」の形!

普通の人の目には見えないけど なぜか エネルギーが「形」をつくって あたしの目には 見る事が できるんだ............

それが襲って来ている............!

 

・ストーンオーシャン  1巻  P194

  

それでいて、4部と同じ閉所型の物語である点は、往年のファンの興味をひく作りになっている。3部、4部、5部、6部、7部、8部と、ジョジョはずっと「ロードムービー型」と「閉所型」を交互に描いているが、これは荒木先生の好みによるところも大きいのだろう。直前と違うものを描きたくなるのかもしれない。

 

「速く正確でパワーも強い」というストレートな強キャラ設定から、「モノをなおす」を応用した追尾や遠距離攻撃も可能なアイデア、「命を生み出す」がゆえに動植物の習性すら取り入れる多種多様な攻撃パターンときて、6部の「糸」は、一見すると少し心もとない。

 

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しかしそのパッと見のか弱さが女性主人公のしなやさかとマッチしているし、糸電話のように遠くの音を拾ったり、糸一本で銃撃の軌道を逸らし、線が集まって固まれば立体になる概念にまで広がっていく。ただ「糸を出せる」という能力が次から次へとバリエーションを示していく爽快感は、否が応でも沢山の能力バトル漫画に影響を与えていることだろう。

 

徐倫の芯が強いキャラクター設定もとっても魅力的だ。直前の5部で描かれたトリッシュをより泥臭く昇華させた結果なのかな、とも感じるところ。面会に来る父・承太郎がドドドドドと登場するシーンは本当に極めに極められたドドドドドという感じで、相変わらずの演出力が光る。承太郎がすでにスタンドを使いこなしつつある徐倫に一々驚くあたりも、微笑ましい。

 

ジョンガリ・Aというスタンド使いが襲ってきた!→そのスタンドは幻覚だった!→やっぱり本物だった!・・・という三段オチは読者を承太郎や徐倫と同じような混乱に叩き落とすし、そこまで幾重にも罠を張ったからこそ、「承太郎が負ける」という展開に受け入れがたい説得力が生まれる。ここまで周到に罠を張り、娘を庇わせることで、無敵のスタンド使い・空条承太郎のDISCを奪う。背後に迫るホワイトスネイクの台詞が端的で素晴らしい。詰め将棋のような読み合いが特徴のスタンドバトルにおいて、「一手」は何よりも重いのだ。

 

『一手』遅カッタ...ナ...

空条

承太郎......

待ッテイタゾコノ時ヲ

 

・ストーンオーシャン 3巻 P25

  

行け...... 徐倫

 

こ...... これって......

あたし...... さっき......

これって!そんな......

 

お前の事は......

いつだって大切に思っていた

 

・ストーンオーシャン 3巻 P38

  

恋人に裏切られ、個人的な復讐を近い、自暴自棄さを見せつつも飄々と刑務所で日々を送っていた徐倫が、死ぬことより恐ろしい運命に直面する。読者にとっても「あの承太郎が負ける」というショッキングすぎる事態が起きるが、それを通して、徐倫は一人前の「ジョースターの血統」として覚醒するのだ。

 

この徐倫の決意(3巻序盤)までが非常に面白く、読み耽ってしまった。徐倫のキャラクターを印象づけ、舞台となる刑務所を描き、スタンド能力を紹介する一編を挟みながら、承太郎を登場させて一気に主人公を覚醒まで導く。ヒーローのオリジンとして的確だ。

 

とはいえ、週刊連載としてはこれはローペースなんだろうな、とも思う。大河漫画としてのジョジョだからこそできる手法なのかもしれない。引き続き、これから寝る前に6部を読み進めます。