ジゴワットレポート

映画とか、特撮とか、その時感じたこととか。思いは言葉に。

完全なる伏線消化。『仮面ライダーディケイド』の最終回とは一体なんだったのか

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改めて考えると、『仮面ライダーディケイド』ってすごい作品だったなあ、と。

 

小学校高学年の頃に『クウガ』を観てそれから平成ライダーシリーズと共に特撮オタクとして育ってきた自分にとって、『ディケイド』はやはりかなり思い入れが強いというか、本当に驚異的な作品だった。

 

仮面ライダーディケイド Blu-ray BOX

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※本稿は引っ越し前のブログに掲載した内容に加筆修正を加えたものです。(初稿:2015/9/11)

 

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振り返れば、平成ライダーシリーズは「伏線が投げっぱなしになる」と言われることが少なくない。『剣』の序盤で始がブレイドのイラストに目を見張っていたのも、『響鬼』で津村努という青年が思わせぶりに出てきて特に何もなかったのも、『カブト』の赤い靴計画が言うほど物語的に活用されなかったのも、こうやって挙げていけばモヤモヤなポイントは沢山ある。(正確に言うとこれらは本来の意味での「伏線」ではなく、言うなれば「未消化の要素」「前フリはあったが答えが無かったもの」というやつなのだが、誤用も含め一般的に用いられる「伏線」のニュアンスでご理解いただきたい。)

 

平成ライダーシリーズでこのような「未消化の伏線」が残るのは、実はその製作スタイル的に当然の結果とも言える。『鎧武』の時に明確に判明したが、いわゆるアニメ制作現場における「シリーズ構成」が存在しないので、(さすがに大枠は決まっているだろうが)、割と行き当たりばったりで1年間マラソンして作っているのだ。

 

むしろそんな作り方で一応でもまとまっているのがすごいと言えるのだけど、これが時に揶揄される平成ライダー特有の「ライブ感」というやつなのだろう。2015年現在で1年続く連続ドラマを撮っているのはライダーと戦隊と太河ドラマくらいのもので、そもそもそれが何年も継続して走り切っていることが結構な偉業なのかもしれない。

 

その「ライブ感」の一種の最高到達点だったのが、『仮面ライダーディケイド』だ。

 

2009年に放送が開始された本作は、記憶喪失の青年・門矢士が過去の平成ライダーの世界を渡り歩くという、ロードムービー型のお祭り作品であった。昭和ライダーの世界観と違い、平成ライダーは『クウガ』以降各々の作品が完全に独立しており、「先輩ライダー」という概念が長らく消滅していた。だからこそ、毎年野心的な設定で作風をどんどん変えていけるのが強みであり、その決定打となった『龍騎』や、意欲作である『響鬼』など、「不揃いという統一感」が売りのシリーズだったと言える。

 

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で、あるからして、『劇場版 仮面ライダー電王&キバ クライマックス刑事』で電王とキバが共演した際に、腰が抜けそうになった。公開された予告で、電王とゼロノスとキバが並び立っている。この作品が出てくるまでは絶対にあり得ない事態だったのだ(ハイパーバトルビデオは除く)。平成ライダー初の新旧共演となった本作は、その後もMOVIE大戦という形式で冬の風物詩になっていく。


そんな流れもあって、ディケイドの1話が放送された際、その冒頭数分がとにかく驚愕だった。今度は電王やキバといった主役級のライダーだけではない。いわゆるサブライダーたちも沢山登場していたし、過去のバイクもアイテムも技も、9年間をごった煮にした数分がそこにあった。

 

第1話「ライダー大戦」

第1話「ライダー大戦」

 

 

そうして幕を開けたディケイドは、過去のライダーの世界をリイマジネーション(=パラレル)だと明言し、本当に根っこのテーマだけを残して設定を書き換えていった。

 

クウガは割と原典に忠実だったものの、「親子の物語」に焦点を当てて子供をライダーにしたキバの世界、「ライダー同士の争い」に裁判という解釈を与えた龍騎の世界、「人間とオルフェノクの共存」を学園モノに落とし込んだファイズの世界など、原典の根幹中の根幹だけはそのままに、新しい主役を据えて、そこをディケイドが渡り歩いていくという異色の物語に仕上がっていた。

 

主人公・門矢士の不透明な過去、なぜか破壊者として疎まれ・襲われるディケイド、過去のライダーを敵として差し向ける謎の男・鳴滝、その鳴滝となぜか協力しているキバーラというモンスター、士の過去を知るという神出鬼没のお宝ハンター・海東、ディケイドが世界を破壊する予知夢(?)を見た夏海。なぜ夏海の世界は崩壊したのか、紅渡とはどういった存在だったのか、ネガ世界の音也やライダー大戦世界の剣崎とは何だったのか、仮面ライダーキバーラとは、ライジングアルティメットとは、どうして昭和ライダーや戦隊の世界とも繋がったのか。

 

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そんな沢山の「伏線」に答えを示したのは、2009年の年の瀬に公開された『仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010』だった。

 

仮面ライダー×仮面ライダー W(ダブル)&ディケイドMOVIE大戦2010 ディレクターズカット版[DVD]

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ディケイド完結編に登場した紅渡に言わせると、「ディケイドに物語はありません」。「ライダーの世界を一度破壊することで、消える運命にあった仮面ライダーの物語を永遠の物にする」、それがディケイドの存在理由だった。

 

文字にすればかっこいいが、要はこれは「クウガ~キバまでの過去のライダーをディケイドに再登場させ活躍させ、コンテンツとしての価値を付加するのがディケイドの目的」ということであり、もっと汚い言い方をすれば「東映とバンダイが過去のライダーで商売したいからお祭り作品やって知名度アップだ!」というものだ。

 

これを超マイルドに言い換えると、「ディケイドに物語はありません」になる。

 

だから、「伏線」なんてそもそも意味がなかったのだ。ディケイドの目的は、「クウガ~キバまでのライダーを活躍させ、現代の消費者(子供たち)に過去のライダーを宣伝すること」。だから、とにかく盛り上がれば良いし、思わせぶりにして煽れば良いし、画的に豪華なら整合性はおざなりで良いのだ。

 

鳴滝という存在は意味不明でも彼が送り込んだ過去のライダーとの戦いは盛り上がったし、海東がその場その場で一貫性の無い行動を取ってもそれで視聴者の気を惹ければ構わないのだ。

 

つまり「過去ライダーのプロモーションビデオ」をずっと炎上させながら半年間流したようなものであり、メタフィクションとしての一種の禁じ手で全ての伏線を見事に消化したのである。結論は、「ディケイドに(そもそも)伏線はありません」だったのだ。


極論、これほどまでに綺麗な作品もない。「盛り上がり優先、整合性はおざなり」を力技で「是」にしてしまった。その反則技が気に入らない・納得できない人も多いだろうし、メインライターが変わる前はそういう落としどころじゃなかったとか、放送倫理・番組向上機構(BPO)に色々言われたとか、この辺りの話題は今でもファンの間で語り草だ。

 

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ただ私は、当時「絶対にまとまらないだろうな・・・」と不安しかなかったディケイドの物語が究極の理屈を持ってきたことに心底びっくりしたし、一応の説明が出来てしまえる・ディケイドという物語を(その是非はともかく)ちゃんと消化できるロジックを提供してくれた、そのことが非常に嬉しかった。

 

だから、賛否両論な「ディケイド完結編」は、私の中では傑作にもカウントしたいのである。

 

 

データカードダスの「ガンバライド」に始まり、『ダブル』のガジェットアイテム「ガイアメモリ」にも歴代ライダーが顔を並べだした2009年。そこから主に映画をメインに、過去のライダーたちは引っ切り無しに共演していくことになる。

 

「全てを破壊し、全てを繋げ」とはまさにコンテンツ的な意味合いであり、平成ライダーが持っていた「不揃いという統一感」はかなりのレベルで破壊された。時に安売りや過去作へのリスペクトを欠かした姿勢が取り沙汰され、今となっては『ディケイド』が破壊したのが果たして本当に良かったのか考え込んでしまうけれども、少なくとも『オーズ』や『フォーゼ』あたりで玩具が阿呆みたいに売れていたライダーバブルには繋がったのだろう。

 

まずもって商売なのだから、売れなければシリーズは続かない。『響鬼』の路線変更をリアルタイムで経験した身としては、この現実を突きつけられるとどうにも弱いのが本音だ。

 

そんな究極の商売道具だった『仮面ライダーディケイド』だからこそ、門矢士があの後も旅を続け「自分の物語」を紡いでいる姿にはグッとくるものがあるし、『ウィザード』終盤の特別編や『仮面ライダー大戦』における彼の語り口調にはとても感じるものがあった。

 

先輩たちに色々と教わった『ウルトラマンメビウス』や、新たな地球のスーパー戦隊へ育った『海賊戦隊ゴーカイジャー』など、特撮ヒーローのお祭り作品も十分に一周したと思えるが、その中でもディケイドは(良くも悪くも)異端児だったな、と思えてならない。

 

彼の物語の「最終回」は、むしろ今後も、描かれない方が綺麗なのかもしれない。

 

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小説 仮面ライダーディケイド 門矢士の世界?レンズの中の箱庭? (講談社キャラクター文庫)

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