ジゴワットレポート

映画とか、特撮とか、その時感じたこととか。思いは言葉に。

【最終回感想】『アカギ』が27年かけて辿り着いた物語のオチについて

FOLLOW ME 

近代麻雀 2018年 3/1 号 [雑誌]

 

連載開始から27年、やっと『アカギ 〜闇に降り立った天才〜』が終わった。

 

私が同作を知ったのは大学生の頃だったので、27年のうちの約10年間を連載で追っていた計算になる。言うまでもなく、その間はずっと鷲巣麻雀をやっていた。長い、長い、本当に長い一晩だった。

 

スポンサーリンク

 

 

 

www.excite.co.jp

 

鷲巣麻雀開始から決着までを解説した記事を発見。各話のあらすじがまとめられているが、やはり途中までは面白い。主にアニメが終わった辺りまで。

 

前述の記事からその辺りを引用。

 

95話 雷光 鷲巣、流れが悪いなりに強運でドラ3を手に入れる。


96話 剛運 鈴木に鷲巣のアガリ牌が。しかし、アカギからの直撃かツモ上がりを狙い、差し込ませない。


97話 猶予 アカギ、なかなか振り込まない。鷲巣、なかなかツモれない。


98話 強欲 死目前のアカギが震えないことに、鷲巣が震える。しかし、手はまだ伸びてドラ6に。


99話 魔物 まだ震えないアカギに、またしても鷲巣が震える。しかし、さらに手は伸びてドラ8に。


100話 嶺上 鷲巣いわく魔物の意志、ということでドラ12。名言「強運が苦しい」が飛び出す


101話 物の怪 鷲巣、一度ツモする。上がれない。


102話 喪失 鷲巣、まだ鈴木に差し込ませない。アカギの手牌が良くなる。


103話 水泡 鷲巣のアガリ牌がアカギからこぼれそうになる。


104話 垂涎 アカギ、鷲巣のアガリ牌を捨てるも、安岡が頭ハネ。鷲巣、暴れる。


105話 鼠 アカギ、強欲だと鷲巣に講釈をたれる。

 

やっぱりこの辺り(3回戦)は印象的ですね。悪魔のドラ12からの、安岡さんのドヤ上がり。

 

スポンサーリンク

 

 

 

いよいよアレだったのは、やはり伝説の地獄編。

 

248話 成敗 鷲巣、人間達をまとめ上げ、反乱を起こす。槍のようなもので鬼の素足を刺す。


249話 亡者 鬼、鷲巣の素足攻撃対策に、ブーツを履いてくる


250話 反乱 鬼のボスが鬼軍の士気を上げる。


251話 一騎 人間軍、全滅したと見せかけ、ボスが近寄ってきたところに一気に攻撃。


252話 殲滅 鷲巣、ボス鬼の体内に潜入。


253話 閻魔 閻魔登場。鷲巣、威光で動けない。


254話 威光 閻魔に頭を踏まれ、現実のアカギとリンクする。


255話 現世 現世からの力を受けて鷲巣巨大化、閻魔をビンタ。「仏陀様にも殴られた事ないのに・・・」


256話 出口 さらに巨大化して地獄を脱出。現世で富士山を破壊。自衛隊に狙われる。


257話 惨状 少しずつ小さくなりながらも、富士山から東京の武蔵野まで歩いて帰宅。


258話 復活 幻想を見ていた鷲巣は、蘇りに成功。もう一度アカギとの戦いへ。 

 

そんなこんなで色々あって、鷲巣麻雀は終了。

アカギは勝ちをおさめるが、遅れて目を覚ました鷲巣はアカギとの再戦を願って追いかけ回す。アカギはふらっと訪れた賭場で勝ちすぎた故にひと悶着起きるが、色々あって命を拾う。後れてその賭場に到着した鷲巣は、またもやアカギを取り逃がしたことを大いに悔いる。

 

アカギは鷲巣に思いを馳せ、鷲巣はアカギを執念で追い続ける。そんなラストとなった。

 

スポンサーリンク

 

 

 

 読み終えてすぐに連想したのは、『僕だけがいない街』だった。

 

僕だけがいない街(1) (角川コミックス・エース)

僕だけがいない街(1) (角川コミックス・エース)

 

 

「過去に戻って女の子を救う」という作品が、終わってみれば実は「主人公と犯人との奇妙なライバル関係」が落としどころだったことに気付く。

「どうやって女の子を救うか」「どうすれば最悪の未来を回避できるか」という縦筋が、「果てしない攻防を繰り広げた俺とお前の奇妙な関係」に収斂していく様は、期待していたものとはちょっとだけズレたが、納得のいくものであった。

 

『アカギ』もおそらく、狙いは近いところにあったのだろう。

中学生で裏社会に入り麻雀を覚え、驚異の勝負強さと悪魔的引きを武器に頭角を現していくアカギ。数々の対戦相手と死闘を繰り広げるが、その対戦相手のパーソナルな部分には興味が無く、血に飢えた勝負ジャンキーとして死をも厭わない孤高の存在。

 

そんなアカギが、初めて「人間」として興味を持てたのが、鷲巣だったのかもしれない。

常に対戦相手を小馬鹿にして挑発し、しかし勝負が終わればさした興味も残さなかった彼が、勝負が終わった後にも鷲巣が温泉に浸かっちゃう想像を膨らませてしまうほどに、鷲巣という人間に興味を示した。

死闘を繰り広げた先にある、奇妙な、友情とも宿敵とも言える関係。鷲巣はアカギを追い続け、アカギは鷲巣を想い続けるのだろう。

 

後年、アカギは自ら死ぬことを選ぶ訳だが、もしかしたら「鷲巣と出会ったことによる価値観の変容」がその一助になったのかもしれない・・・ な~んて、超絶好意的な解釈も一応あり得るのかな、と。

 

まあ、多くの読者が望んでいたのは、アカギが裏世界の強敵たちをバッタバッタとなぎ倒していくダークヒーロー物なのだ。その大ボスとして君臨した鷲巣だが、途中から予想以上に小物化してしまい、アカギの無双感を削ぐ結果に繋がってしまった。

もはや、特に地獄編以降はお世辞にも褒められたものじゃない話運びだったが、とはいえ、「あのアカギが他人に興味を持った(=ちょっとだけ真っ当な人間になった)」という着地点は、私は結構好きである。だから、鷲巣麻雀が終わったあとのあのエピローグも、かなり楽しんで読んでいた。

 

アカギ 36―闇に降り立った天才 (近代麻雀コミックス)

アカギ 36―闇に降り立った天才 (近代麻雀コミックス)

 

 

とはいえ、福本作品的には「狂気こそ実力」なので、もしかしたらアカギは、鷲巣という人間に真っ当に興味を持ったことで、少し弱くなってしまったのかもしれない。「真っ当」というのは、「常軌」の中にあるからだ。アカギは、「常軌を逸している」からこそ強いのに。

 

そういう解釈ならば、鷲巣はアカギに決定的な一打を喰らわせることに、実は成功していたのだろう。「ヤツを『人間』に貶めてやったぞ!」、みたいな。

 

『近代麻雀』、思わず最終回掲載号だけは買ってしまいましたよね。記念というか、むしろ連載を追い続けた自分へのけじめというか。しかしまあ、「ひと晩を20年かけて連載する」って、ギネス記録獲れるんじゃないですかね。HAHAHA。(乾いた笑い) 

 

アカギ 全36巻BOXセット

アカギ 全36巻BOXセット