ジゴワットレポート

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感想『マグニフィセント・セブン』イケてるオジサンたちが渋くキャッキャウフフして散っていく高揚感といったら

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マグニフィセント・セブン (吹替版)

 

未見だった『マグニフィセント・セブン』を鑑賞。公開当時からとても評判が良かったのは知っていたが、中々タイミングが合わず、見逃したままになっていた。配信していたAmazonプライムビデオ様々な訳だが、気に入ってしまった作品は結局Blu-rayを買いたくなってしまう。本末転倒というか、Amazonの掌の上というか。

 

『七人の侍』を原案とした本作。ストーリーに小難しいことは何ひとつ無い。悪い奴に乗っ取られた街を良い奴らが救う、そのストレートな物語進行の中に、これでもかと詰め込まれたかっこよさと美学が光る。

 

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私がデンゼル・ワシントンを彼とちゃんと認識して観た初めての作品は、確か『ジョンQ』という作品だったと記憶している。懐かしい。『マグニフィセント・セブン』で主演を務める彼は、全身黒で決めた上にダメ押しで黒い馬に乗るというズルすぎるビジュアル完成度であった。黒い馬って男の子心をくすぐりますよね。そんなかっこよすぎる彼は、金で依頼を受けるとうそぶきながらも、根の良さと正義の精神が随所から滲み出る。安定の演技であった。

 

特筆すべきはやはりクリス・プラット。みんな大好き『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『ジュラシック・ワールド』に続き、本作もとっても当たり役。コメディアン出身という彼の経歴は、「軽すぎない軽さ」をかもしだす得意の演技プランにこれでもかと反映されている。

イーサン・ホークは相変わらずの渋さと豪快さを兼ね備えたキャラクターで、時に見せる弱さが観ている側の心をグッと掴む。相棒役のイ・ビョンホンも素晴らしく、「熟練の忍者」のようなキャラクター造形には痺れた。敵の銃弾を避けながらの「昔オヤジが言ってたことを思い出すよ」「なんて言ってたんだ? ぇえ?」「とにかく色々言ってたんだよォ!」の会話の良さと言ったら。これが俗に言う「尊い」という感情なのだろうか・・・。

 

本作の強みは、「西部劇」「アウトローなヒーロー物」「凸凹チーム物」というパターンにおいて、観る者が期待する様々な要素をひとつひとつ当てはめていくかのようにこなしていく部分にある。

なにかと酒を賭けたりくすねたり会話のネタにしたり、決戦前夜にみんなでどんちゃん騒ぎをして仲を深めたり、出会った頃より確実に仲が進んでいる一面が見えたり、最後にはきっちり決闘で締めたり。特に決闘においては、その直前、家屋から手下がフラッと出てきて親玉が一瞬安堵したと思ったらそいつはやられていました〜 ででーん!!デンゼル・ワシントン登場〜〜!!! みたいな黄金パターンを恥ずかしげも無くやってくれる。安心感が半端じゃない。

イーサン・ホークが敵前逃亡した時は「はいはい、どうせここぞってタイミングで戻ってくるんでしょ」と分かりきっているのに、それでも彼が「悪魔の銃だ!ガトリングだぞ!」と叫びながら馬で突入してくるシーンには燃えざるを得ない。ダメ押しでイ・ビョンホンに「戻ってくると思ったよ。これ(酒瓶)を忘れてたからな」なんて言わせちゃって!くそう!ズルい!ズルいって!!

 

そんな魅力的な面々が最初に街を訪れたシーンもすごく良かった。敵に加担した保安官に「銃を差し出せ」と迫られるデンゼル・ワシントン。彼は素直に銃をホルスターから抜くが、「俺は良くてもこいつらは分からないぜ」と。え? どういうこと? と敵が周囲を見渡すと、 ドヤァ...   ドヤァ...    ドヤァ...   と街の至る所に登場するメンバーたち。家屋の柱にもたれかかっちゃったりして!リラックスしてるようで目が笑ってないよ!くぅ〜!!

 

そんな彼らが、圧倒的なまでの敵の軍勢を前に、ひとり、またひとりと倒れていく。静かに息をひきとる者もいれば、無残に屋根から落ちて転がっていく者まで。かっこよいキャラクターたちが、最期までかっこよく戦い抜いて散っていく。フェティシズムあふれる人物造形の面々がその命を終わらせてしまうのは、やはり観ていて辛い。侘び寂び、散り際の魅力。

しかしだからこそ、最後に敵の親玉との決闘に辿り着く我らがデンゼル・ワシントンの勇姿が光る。そこで吐露される彼の秘めたる想いや(まあここは賛否が分かれる真相だとは思うが演技の見せ場という意味ですごく良かった)、最後に鳴る銃声、そしてラストカットに至るまでも隙がない。非常に丁寧に、王道とベタを決して恐れることなく、変に捻ることなく、作られている。そしてその「パターン」に胡座をかいていない。ここが良い。

 

上で「西部劇で期待されるシーンをちゃんとやってくれる」と書きはしたが、現在アラサーの私は、当然のように西部劇の全盛期を知らない年代にあたる。

むしろそのパロディやオマージュで西部劇を知ってきた世代であり、例えば『バック・トゥ・ザ・フューチャー パートⅢ』もそうだし、パッと思い浮かんだのを挙げれば『クレヨンしんちゃん 夕陽のカスカベボーイズ』だってそうだ。この手の、西部劇の美味しいところだけをパロった作品が、このジャンルへの入り口だった。

 

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だから、西部劇の何たるかを語るには勉強不足なのだけど、その反面「こういうシーンが西部劇の旨味なんだよね」というところだけは先に知っちゃっている状態である。これが、濃縮加工されるパロディの強みだ。

そんな西部劇トーシローの私でも、分からないなりに「これぞ西部劇的なシーンきた!!」と熱くなれたのは、この『マグニフィセント・セブン』がその辺りを自覚的に踏襲しているからだろう。くるくる回された拳銃がホルスターにストンと収まる高揚感を前にしては、勉強不足だの何だのの言い訳は用を成さないのだ。

 

欲を言えば7人と街の人々との交流がもう少し観たかった気もするが、間延びにも繋がりそうなので諸刃の剣だったのかもしれない。オジサンたちが内輪で渋くかっこよくキャッキャウフフして(非常に誤解を招く表現)、そして盛大に散っていく、そのシークエンスにピントを絞っていたのだから不満はない。結局、観たいのはそこなのだ。

 

あと、吹替で観たのですが、キャストがとても良かったですね。デンゼル・ワシントンに大塚明夫は勿論のこと、クリス・プラットに三上哲ときましたか。MCU繋がりでベネディクト・カンバーバッチをよくやられる三上哲、という場外ニヤニヤも楽しい。イーサン・ホークの宮本充もね、もうね、とにかくかっこよくて。

眼福ならぬ、耳福(?)でした。

 

 

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◆過去記事

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